2020/11/24 Takeda IBD 全国Webセミナー

IBD診療のおけるバイオマーカーの有用性  -既存・新規をいかに使うか?-

岡山大学病院 炎症性腸疾患センター センター長 准教授 平岡 佐規子先生講演

潰瘍性大腸炎の治療目標はまずは血便 下血 下痢 腹痛などの臨床症状をなくすことですがさらに粘膜まで完全に治す(完全粘膜治癒:MES:0)と以後 再燃、手術 発がんが減ってきます。粘膜治癒を確認するには潰瘍性大腸炎なら大腸カメラを受けることが必要ですが短期間に何度もすることは患者さんの負担が大きくなります。そこで大腸カメラ、小腸カメラなどの内視鏡検査をする代わりに粘膜がどの程度改善しているか推測できるバイオマーカーが最近臨床で応用されています。便中カルプロテクチン(FCP)とLRGです。これまでは主としてバイオマーカーとして血液検査のCRPが使用されていました。CRPはクローン病には有用ですが潰瘍性大腸炎ではあまり役に立ちません。またクローン病で下痢 腹痛などの症状がなくCRPも正常なのに小腸カメラで観察すると小腸には潰瘍を多く認めることもあります。またCRPはステロイドを投与中は役に立ちません。FCPは潰瘍性大腸炎症例で測定できる便の検査です。炎症の全体像を反映し粘膜治癒の指標になります。FCPの値を参考にして症状がなくても治療を強化すると再発率が低下するというデータがあります。寛解状態のときはFCPの値は安定していますのでFCPを測定して以後継続してチェックするとそれが上昇した時は今後の再燃が予想されます。但し 明らかに再燃して下痢 下血 腹痛などの症状が強い時は測定しても役に立ちません。長所は腸管以外の炎症の影響を受けにくい点ですが 短所はまず便の採取が必要なので患者さんにとって煩わしい点です。また便検体の採取方法が不十分、不適正であると検査結果が異なり正しい値が得ることができないため 採取方法の確認 指導も必要です。また再燃予測の時の値(カットオフ値)に幅があります。さらに特殊な検査ですので通常結果を確認するのに日数がかかります。LRGは血液を用いてクローン病 潰瘍性大腸炎の両疾患に測定できます。FCPと同様に粘膜治癒 炎症の程度を反映しますが粘膜治癒の確認はFCPの方が鋭敏とされています。長所は血液検査なので患者さんの手間が少ない。また症状が強いときも値は比例します。短所は腸管以外の炎症(ベーチェット病、関節リウマチなど)でも上昇することがあります。FCPと同様特殊な検査ですので通常結果を確認するのに日数がかかりますFCP LRGともに寛解状態になったら一度測定して患者さんごとに低値を設定して以後3か月毎に測定し上昇があれば再来や次回大腸カメラなどの画像検査の予定を早めるとよいでしょう。