クローン病について

クローン病について2023-12-26T15:11:29+09:00

炎症性腸疾患(IBD)

炎症性腸疾患とは?

炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)とは、主として腸などの消化管の粘膜で炎症が起こる病気です。
一般的には、下記にてご説明する潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)の総称です。
IBDは原因不明の病気で、国から難病に指定されています。

ほとんどの場合は一般的な治療で治すことができます。しかし 良くなったり悪くなったりを繰り返すことが多く、寛解期(調子が良い時)になれば継続的に治療を受けながら日常生活を送ることが可能です。

クローン病(CD)

クローン病とは

クローン病(Crohn’s Disease:CD)とは、消化管全体で炎症・潰瘍が起こる病気です。
潰瘍性大腸炎が主に大腸で起こるのに対して、クローン病では口、食道、胃、十二指腸、小腸、肛門までの消化管全体にみられます。
腸の縦方向に潰瘍ができたり(縦走潰瘍)、敷石のように見える潰瘍ができたり(敷石状病変)、連続性のない潰瘍が飛び飛びにできたりするのが特徴です。

これまでクローン病は稀な病気とされていましたが、以前から増加傾向にあり、10~30代の若い世代に多く発症します。
原因不明の病気で国の指定難病の1つですが、適切な治療により症状が抑えられれば、健康な方とほとんど変わらない毎日を送ることが可能です。

クローン病の症状

クローン病の主な症状

腹痛|下痢|血便・下血(※潰瘍性大腸炎と比べると少ない)|発熱|肛門のトラブル(裂肛、痔瘻、肛門周囲膿瘍など)|体重減少 など

クローン病の腸内

クローン病の初期症状

  1. 便がゆるくなり大便の回数が増加して下痢になります。
  2. 排便時に腹痛をともないます。
  3. 何となく体がだるく38度くらいまでの微熱があります。
  4. 食事をすると下痢や腹痛がおこるので食事量が減って体重が減ってきます。
  5. 排便時や椅子に座った時にお尻が痛みます。(10代〜30代でこの症状が出ている場合はすぐにご相談ください)
  6. 肛門や肛門周囲が腫れて痛くて、膿が出たりします。

クローン病の活動期と寛解期

クローン病は“活動期”と“寛解期”に分けられ、活動期とは症状が強く現れる時期、寛解期とは症状が治まっている時期のことを言います。
現在、クローン病を完治させる治療方法は確立されていないことから、クローン病と診断された場合には程度に応じて寛解期への導入を目指した治療が行われ、症状が治まったらそれを維持するための治療が行われます。

適切な治療により寛解期を維持できる場合もありますが、活動期と寛解期を繰り返す患者様もおられます。

クローン病の合併症

クローン病になると浅い粘膜から炎症が起こり、そこから深い粘膜へと進行していきますが、腸管壁の深い部分まで炎症がおよぶと様々な腸管合併症を引き起こします。また免疫異常が発症の一因にあるので全身に合併症(腸管外合併症)が起こる場合があります。

腸管合併症として、狭窄(腸が狭くなること)、穿孔(腸に穴が開くこと)、瘻孔(ろうこう:腸と腸、また他の臓器・皮膚と繋がること)、膿瘍(膿が溜まること)などがあり、また大量出血や小腸がん・大腸がん・肛門がんがみられる場合もあります。

腸管外合併症として、お口の病気としてアフタ性口内炎、足首やすねにみられる結節性紅斑、主に足にみられる皮膚病変である壊疽性膿皮症、骨・関節の合併症として強直性脊椎炎、多関節炎、骨粗しょう症、眼合併症、腎結石 肝胆道系疾患などがあります。

クローン病の検査方法

石田消化器IBDクリニックでは潰瘍性大腸炎に対して次のような検査を実施しています。
各種検査を実施した後、病状をよく把握したうえで最適な治療方法をご提案いたします。

採血検査

炎症や貧血の有無、栄養状態などを確認して病気の評価や治療方法の選択、治療効果の判定などを行います。

便検査

他の病気を合併していないか、またクローン病と似た病気と鑑別するために、細菌の有無を調べる便培養検査を行います。
また便潜血反応検査を実施することで、便を見ただけでわからない微小な出血の有無が確認できます。

内視鏡検査

大腸から小腸の粘膜を確認して、縦走潰瘍などのクローン病特有の病変がないか調べる大腸カメラ、小腸の病変が疑われる場合により詳細に状態を確認するための小腸カメラ(腸閉塞がなければカプセル内視鏡が用いられます)などの内視鏡検査を実施します。

腹部エコー検査

腹部に超音波をあてて、反射してくる音を受信し画像化して、肝臓、胆のう、膵臓、脾臓、腎臓、小腸、大腸など体内の臓器の状態を確認します。
お体への負担がなく苦痛をともなわない検査で、リアルタイムで腸の状態などを確認することができます。

CT、MRI検査

腹部の臓器の状態や膿瘍の有無などを確認するために、CT、MRI検査を実施する場合があります。
※CT、MRI検査は他院にて実施いたします

小腸造影検査

造影剤を使用して、小腸全体のレントゲン写真を撮影して潰瘍、瘻孔 狭窄などの病変の位置や程度を確認します。
※小腸造影検査は他院にて実施いたします

クローン病の治療方法

クローン病の治療方法として薬物療法、白血球除去療法、栄養療法、手術(外科的治療)などがあり、病気の状態に応じて適切な方法を選択いたします。クローン病においては、栄養療法(エレンタール、ラコールなど)を一緒におこなうことがお薬の効果を高めます。これらの治療法を一人一人の病状や程度、社会的な状況(学生なのか、就職しているのか、妊娠希望なのかなど)に合わせて選んでいきます。

薬物療法

5-ASA製剤

クローン病の薬物療法の基本的なお薬で、症状が軽度な方に有効です。

ステロイド

炎症抑制作用が強いため、活動期の炎症を鎮めて寛解期へ導入する効果に優れています。
長期に服用すると副作用が出現するので継続して服用することはありません。

免疫調整薬

クローン病の原因ははっきりわかっていませんが、過剰な免疫反応が関係していると考えられているため、免疫調整薬を使って免疫反応を抑えます。

生物学的製剤

炎症を引き起こす体内物質の作用を抑制します。
ステロイドや免疫調整薬と比べて副作用が少なく、それでいて高い効果が期待できる治療方法です。

栄養療法

食事による刺激により腸が炎症を起こすのを抑えて、栄養状態を改善するために栄養剤(エレンタール ラコールなど)を投与します。
口または鼻からチューブで栄養剤を投与する経腸栄養療法と、重度の狭窄や病状が重いため経腸栄養療法が行えず、静脈にカテーテルを留置して栄養輸液を投与する完全静脈栄養療法があります(入院して行うことになります)。

白血球除去療法

安全性が高く、副作用の少ない治療方法で、腕の静脈から血液を体外へ取り出し、特殊な装置に炎症に関わる血液成分を除去した後、体内へ血液を戻します。

手術(外科的治療)

内科的な治療では十分に症状が改善されず、普段の生活に支障を来すような場合には手術(外科的治療)が検討されます。

クローン病の予後

クローン病は、進行すると腸に穴が開いておなかの中に膿がたまって、ひどい発熱や腹痛がおこることがあります。
腸が狭くなって便が出なくなったり、頻回に吐いたりするようになることがあります。また、肛門周囲が腫れて耐えれないような痛みがでることもあります。

このような状況になると手術で腸を切ったりお尻から膿を出したりして直さなければならなくなります。手術後に治療を怠ると、数年後にまた手術になります。

2002年以前までは、クローン病の患者さんは手術を受ける方が大多数でしたが、近年は、治療が非常に進化したので手術を受ける方は減ってきています。
また潰瘍性大腸炎と同様にクローン病の調子がよくても継続して治療をすることが必須ですが、そうすることにより、進学、就職、出産など、健康な方と同様な生活が送れるようになりました。

ただし症状によっては、難治のため手術を繰り返して食事ができなくなることがごく稀にあります。また、病気の治療が難航すると癌がでることもあります。

クローン病の治療費について

潰瘍性大腸炎の治療費は、医療保険が適用されます。
病状が中等症以上のかたは難病支援制度による公的な援助があり、これを利用すると所得に応じて月に一定額以上かからないようになっています。

クローン病の早期発見・治療のメリット

クローン病は初期に発見・治療をはじめた患者さんの多くは、投薬治療で、手術を受けられる方は少なくなります。

クローン病は、放置しておくと病気が進行します。
腸に狭い所ができる(狭窄)、お腹の中に膿がたまる(膿瘍)、腸と腸がくっつく(内瘻)、腸に穴があいて皮膚とくっつき皮膚から消化液や膿がでる(外瘻)などができてきます。
狭窄、膿、瘍、内瘻、外瘻などをクローン病の腸管合併症と呼びます。このような状態になると腹痛がひどく熱がでて食事もとれず体重が減ってきます。この段階ではお薬でなおすことができず手術で腸を切って直さなければなりません。

以前はクローン病、特に小腸のみに病気がある患者さんは早期発見が難しく、受診した時にはすでにクローン病が進行して、合併症を持った患者さんが多く見られました。そのためかってはクローン病は手術と縁が切れない病気でした。

当クリニックでは、小腸カプセル内視鏡の導入により、クローン病の早期発見が可能です。下痢や腹痛が続くときには、早めの受診をおすすめ致します。

クローン病のよくあるご質問

潰瘍性大腸炎との違いは?2020-12-03T14:45:47+09:00

潰瘍性大腸炎が主に大腸で起こるのに対して、クローン病では、口、食道、胃、十二指腸、小腸、肛門までの消化管全体に潰瘍の発症がみられるのが一番の違いです。
特に小腸に病変が多いのが特徴です(患者様全体の70%~80%に小腸に潰瘍を認めます)
また共通している症状も多いのですが、「潰瘍性大腸炎と比べると血便・下血が少ない」「肛門のトラブルが多い」などの特徴もあります。

クローン病はどうやって検査しますか?2020-12-03T14:46:36+09:00

採血検査や便検査などの基本的な検査に加えて、内視鏡検査(胃カメラ 大腸カメラ 小腸カプセル内視鏡)などの画像検査を組み合わせて総合的に病気の状態を確認します。
特に炎症の状態・程度を確認するうえで、内視鏡検査は重要な検査となります。

クローン病は完治できるのでしょうか?2020-12-03T14:48:20+09:00

治療により、長期にわたって良好な状態を保たれている方も大勢いらっしゃいますが、はっきりとした原因がわからず、根治のための治療方法(一度施行すれば以後は施行しなくてもよいような治療:例えば癌に対する手術)が確立されていない以上、完治ではなく寛解(調子が良い状態)を目指した治療を行うことになります。
そのため治療は長期に継続して行う必要があります。しかし医学は日進月歩なので今寛解を維持していけば将来根治治療ができた時により効果が期待できると思われます。

手術を受ければクローン病は治りますか?2020-12-03T14:49:05+09:00

内科的な治療だけでは十分な効果が得られない場合や、重大な合併症(狭窄、膿瘍、瘻孔など)が起こっている場合などに手術(外科的治療)が適応となります。
術後に一時的に症状は改善しますが、手術を行ってもクローン病を根治させることはできず、手術を受けられた後も再発・再燃して、さらに再手術が必要になる時もあります。そのため術後の再発をチェックするための検査と術後の治療が再手術を防ぐためにとても大切です。

食事内容に注意する必要はありますか?2020-12-03T14:47:36+09:00

大変残念な事実ですがクローン病は食事が腸の炎症を起こし病状を悪化させます。そのため2002年より以前の治療は入院させて食事をさせず点滴で長期間加療していました。一般的にはタンパク質が炎症を起こしやすく 脂質が下痢をおこしやすいので それらは少なめにして炭水化物を多めにするとよいでしょう。また腸に狭窄ができている患者様は水に不溶性の食物繊維を取りすぎると腸閉塞をおこすことがあるので、摂取しすぎには注意してください。
その点エレンタールは脂質 食物繊維を含まず タンパク質はアミノ酸まで分解されているのでクローン病の患者様にとっては理想の食物です(ドリンクです)。ですのでクローン病の患者さんはできれば1日1本でもよいので服用したほうがよいでしょう。但し人によっては味が合わないので長期に継続して飲めことができる患者さんが少ないのが問題点です。クローン病の場合、特定の食事によって症状の悪化を招く恐れがありますので、普段から食事内容にご注意いただくことが必要です。

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