2020/11/30 Takeda IBD 全国Webセミナー

これからの潰瘍性大腸炎治療  ~べドリズマブをどう活かすか~

辻仲病院柏の葉 消化器内科部長 IBDセンター長 竹内 健先生講演

 

竹内先生がバイオマーカーを利用した潰瘍性大腸炎治療を解説してくれました。潰瘍性大腸炎は病態の主体となるサイトカインが多岐にわたるのでそのサイトカインに応じた治療が必要になります。(但しどのサイトカインかは治療前にまだ予測ができません) 治療の目標は粘膜治癒です。粘膜治癒を達成すれば入院や手術が減るからです。クローン病では潰瘍なし、潰瘍性大腸炎では正常粘膜への回復です。クローン病において 半年ごとに内視鏡検査をして症状がなくても内視鏡的に再発があった場合 治療を強化していくと内視鏡的な再発が減ります。(POCER)。これもクローン病ですが 症状に加えてバイオマーカー(CRP, 便中カルプロテクチ)を目標にして治療を改善していくと 症状だけで治療するより入院率は下げて粘膜治癒率を上げることができたとする研究があります(CALM) このような報告からクローン病、潰瘍性大腸炎患者さんの経過観察には症状だけでなくバイオマーカーや画像診断をくみわせることが必要です。画像診断では 大腸カメラ 小腸カメラは短期間に何度も検査することはできないので腸管エコーが経過観察には最適です。CRPはよい血清マーカーですが腸管特異的ではありません。最近保険適応になったLRGは血清マーカー(採血で検査できる)でCRPより有用ですが 関節リウマチ 感染症 心不全 腫瘍などで上昇します。便中カルプロテクチンは便の採取が必要ですが有用なバイオマーカーです。常温で7日間安定性があり 炎症が激しい時は検査値にばらつきがでますが腸管炎症が落ち着いているときは検査値も安定します。過敏性腸症候群との鑑別が可能ですが クローン病 潰瘍性大腸炎以外に感染性腸炎や憩室炎、大腸癌や大きなポリープ 消炎鎮痛剤服用時に上昇します。また潰瘍性大腸炎の直腸炎型では値が低めになります。症状は安定していてもこの値が上昇した時には3、4か月後に再燃することが予想されるので早めの再来 内視鏡検査が必要となります。