2020/7/03 Takeda IBD 全国Webセミナー
接着分子を標的とした炎症性腸疾患治療薬vedolizumab(エンタイビオ)の安全性、有効性について
杏林大学医学部 消化器内科学 教授 久松 理一先生 講演
この講演は 久松先生が 新しいメカニズムで効果を発揮するエンタイビオの潰瘍性大腸炎に対する効果と安全性を文献と自験例で解説してくれました。
日本では2002年にレミケードがクローン病で使用できるようになって その後ヒュラミも使用可能となり 潰瘍性大腸炎でも両者は現在投与できますがこの2剤(レミケード ヒュミラ)は同一のTNF-αをターゲットとした薬剤です。2017年からTNF-αと異なる分子をターゲットした生物学的製剤(ステラーラ)が使用可能となり 2018年からまたさらに異なる、接着因子を標的とするエンタイビオが投与できるようになりました。メカニズムは「IBDあれこれ」で解説する予定です。レミケード、ヒュミラは腸に潰瘍を起こす原因のTNF-αを直接抑えるのに対して エンタイビオはTNF-αを放出する白血球が腸に行かないようするお薬です。点滴静注で効果が出た方は2か月毎に点滴で投与します。日本で使用可能になる前に行われた海外の大規模治験のデータでは投与して1年たつと すっかりよくなった(寛解)方が40%程度 完全によくなったわけではないが投与前より症状が改善した(有効)方が60%程度いました。効果は投与後6週ぐらいまでに効いてくるようです。レミケード、ヒュミラの効果が落ちてきた方にも有効でした。このお薬は副作用が少ないのが特徴で長期に観察すると10%の方に軽い副作用を認めました。久松先生の施設でも治験と同様かそれを上回る効果がでているとのことです。エンタイビオの最適な患者さんは 病状としては 他のお薬を使用してもキチンとなおらず症状がだらだら続いている慢性持続型で あまり重くなくて外来で治療が可能な方。副作用が心配な高齢者、若年者、 副作用でペンタサ リアルダ アサコール、イムラン アザニンなどが飲めない方です。潰瘍性大腸炎の患者さんには腸だけなく他の臓器に症状がある方もいらっしゃいます(皮疹などの腸管外合併症)。それに対して効果があるかはまだよくわかりません。潰瘍性大腸炎治療にこれまでの薬剤と異なるメカニズムのお薬が加わったことは大変喜ばしいことです。当クリニックでもすでに使用している患者さんもいらっしゃいます。薬剤の特徴を熟知して的確な使用を心がけようと思っています。