2020/8/27 Takeda Expert Web Conference in IBD

腸内細菌から考えるIBD診療

京都府立医科大学大学院医学研究科 消化器内科学 准教授 内藤 裕二先生 講演

 

腸内細菌を語らせたら右に出る人がいない内藤先生の講演です。

まずは新型コロナ感染症(新コロ)と消化器の関係を解説してくれました。新コロは肺から感染するだけでなく消化管(特に小腸)からも感染するため感染者の50%程度に下痢や嘔気などの消化管症状が伴い 逆に新コロに感染しても下痢や嘔気などの症状しかでない患者さんが約10%いるそうです。そのため便が感染の元になることもあり 流す時は蓋を閉めてからのほうがよいとのことです。家庭内では洗面所やシャワーのサイホン、トイレが感染場所になるので 使用後手洗いが感染予防にとって大切です。またアルコール消毒よりやはり石けんを使った手洗いの方が予防効果がたかく また僕らは無意識のうちに顔を何度もさわっているので 感染予防には意識して顔をさわらないことが必要です。体を感染症から守る物質に免疫グロブリンがありますがその中のIgAが潰瘍性大腸炎(UC)の病態に関係しています。 IgAは唾液や消化管から分泌されて感染予防に役立っていますがUCでは消化管粘膜に含まれるIgAが減っています。これを増やすためには食物繊維(特に水溶性の食物繊維)を多くとって脂肪や砂糖は減らすとよいそうです。また腸内細菌に関連した治療では便移植療法があります。まだ日本では治験段階ですが 多くのデータをまとめると便移植はUC治療にある程度有効です。順天堂大学のデータでは便移植の前に抗菌薬を服用するとさらに効果があがるそうです。また以前から言われていたことですが腸内細菌のなかでは酪酸産生菌が重要で 結果か原因かはわかりませんがUCでは腸内で酪酸が減っています。酪酸を増加させる(または酪酸産生菌を増加させる)とUCは改善するのですがレミケード、ヒュミラ、シンポニーなどの抗TNFα抗体は酪酸を増加させて腸内環境を健常人に近づける働きがあるそうです。UC治療ではやはり食習慣も重要ですね!