2020/8/6 Takeda IBD 全国Webセミナー

クローン病治療の最前線

~生物学的製剤の最適なポジショニングとは~

滋賀医科大学 消化器内科 教授 安藤 朗先生 講演

今回は エンタイビオのクローン病患者さんに対する使い方を安藤先生ならではの腸内細菌や抗薬物抗体の知見や先生御自身のデータを交えて解説していただきました。 まずクローン病は健常者と比べて腸内細菌叢が変化している(それに対して潰瘍性大腸炎は健常者とあまり変わらない)。多様性が低下し特に酪酸産生菌が減っている。酪酸産生菌が減少すると結果として調節性T細胞の元気がなくなり炎症が起こってくるそうです。クローン病発症のメカニズムの一つとして分かりやすいストーリーですね。

エンタイビオの特徴として5%ヒトの部分があるにもかかわらず効果減弱の原因の一つとなる抗薬剤抗体がレミケード ヒュミラ ステラーラのなかで最も産生されにくい、また抗体の形を工夫して投与時のアナフィラキシーショックを起こしにくくしているそうです。またこの薬剤は腸管へのT細胞の遊走を防ぐことで炎症を抑えますが 特に小腸はT細胞遊走を起こす元となる接着因子を多く発現しているのでこのお薬は小腸の病変に効果が期待できそうです。治験のデータでは投与後10週ぐらいすると効き目が感じられるようです。エンタイビオが適したクローン病患者さんは 他のバイオ製剤を使用しておらず、若くて発症したかた 癌の既往がある高齢者 臨床症状はあまりつよくないが内視鏡では潰瘍が酷いかたなどとの意見でした。今後の使用の参考にしようと思います。