2020/9/07 Takeda IBD 全国Webセミナー

難治性潰瘍性大腸炎を再考する~べドリズマブの短期有効性を踏まえて~

ひだ胃腸内視鏡クリニック 院長 樋田 信幸先生 講演

 

今回は 最近ご開業された 樋田先生が潰瘍性大腸炎 クローン病の病態から最近新しくでたお薬のメカニズムをまとめてくれた講演でした。クローン病は自然免疫の過剰応答が主たる病態で ヒトの腸内細菌叢の異常(dysbiosis)が関わり TNF-αがサイトカインの中心になっています。潰瘍性大腸炎は獲得免疫が主たる病態で 腸内細菌叢の異常はあまり関係なくTNF-αも主体ではなく他の多彩なサイトカインが関わっています。そのため抗TNF-α抗体剤が全然効かない患者さんはクローン病で13% 潰瘍性大腸炎で33%です。プログラフはマクロファージからヘルパーT細胞への情報伝達を防ぐため多くのサイトカインの産生を抑制します。ゼンタコートはサイトカイン産生細胞の中の情報伝達を防ぐので多くのサイトカインの産生を抑制しますがTNF-αは抑制しません。プログラフとゼンタコートは内服薬にもかかわらず効果が早いのですが多くのサイトカインを抑制するので副作用が多いです。ステラーラはIL12とIL23を抑制しますがこれらは直接炎症を起こすサイトカインではなく間接的な抑制であるので効果発現のスピードはゆっくりです。潰瘍性大腸炎の方がクローン病より効果ありそうです。エンタイビオはリンパ球が血管から腸管内に移動するのを防ぐお薬ですのでこれも間接作用ですがこのようなメカニズムであるので全身への作用が少なく局所で効果を発揮するのが特徴です。病態の主体となっているサイトカインには効果が左右されません。潰瘍性大腸炎 クローン病の患者さんの中には腸だけでなく関節痛などの腸管以外の症状を持っている方がかなりいらっしゃいますがエンタイビオはそのような患者さんには使用しにくいです。しかしエンタイビオで腸もよくなり関節症状もよくなったという報告もあります。エンタイビオは治療効果がゆっくり発揮され安定するのが3か月から半年後です。適切な症例は外来受診可能な中等症程度の重症度の方 高齢者や感染が懸念される方 イムランが服用できない方 プログラフで寛解導入した後の維持療法としてなどです。