2021/11/16 Crohn’s disease web seminar in Kyushu

クローン病肛門病変の治療変化:ウステキヌマブ(ステラーラ)の可能性とGMAの工夫

家田病院副院長 IBD部長 太田 章比古先生 講演

 

約1年前に引き続き クローン病患者さん:500人 炎症性腸疾患(クローン病+潰瘍性大腸炎):800人、年間600件の肛門手術をしている!全国でとても高名な家田病院の太田先生にクローン病の肛門病変について講演していただき 小生がその司会をしました。

クローン病の一次病変(裂孔、肛門直腸潰瘍)は内科で治療し基本的にstep upで治療します。このさい口側腸管病変の活動性も考慮します。二次病変(肛門直腸周囲膿瘍、痔瘻、直腸瘻、肛門狭窄、直腸膣瘻)は外科治療の対象です。これらの病変は シートン挿入 膣瘻閉鎖術 狭窄拡張術などの後 生物学的製剤(レミケード ヒュミラ)を導入します。肛門病変を有するクローン病患者さんでは 活動性の高い一次病変、適切な処置をしてもコントロール不良な二次病変、腸管病変のコントロール不良の場合 レミケード ヒュミラを導入します。それでも膿瘍を繰り返しコントロール不良時には早めに生物学的製剤を増量します。早めに導入 増量して狭窄肛門を作らないことが非常に重要です。レミケード ヒュミラ投与中に効果減弱した時に白血球除去療法(GMA)を併用すると 下痢 腹痛 倦怠感 関節痛 口内炎などの症状は改善しますが 週1回より週2回以上GMAを行う(intensive GMA)と更に効果が上がります。Intensive GMAを行うとレミケード増量するのを先延ばしにできるかもしれません。肛門病変の軽度の患者さんはレミケード ヒュミラ両方で治療可能ですが 重くなってくるとヒュミラよりレミケードのほうが有効です。

ステラーラは維持療法になると2ヶ月または3ヶ月毎に皮下注により治療するので患者さんにとって利便性の高い治療です。肛門病変を有するクローン病患者さんをレミケード ヒュミラからステラーラに変更しても肛門病変の増悪は低率です。

クローン病に合併した肛門部癌の特徴

  • 長期間炎症持続(10年以上)の肛門病変に多い
  • 難治性肛門病変に発生する
  • 症状がわかりにくい(癌特有の症状が乏しい)
  • CT, MRI、PETでも早期発見は困難

このように早期発見のサーベイランス方法も確立されておらず予後不良です