2021/1/20 Kyorin IBD Web-Link Seminar

Colitis-associated dysplasiaの診療の実際

関西医科大学 内科学第三講座(消化器肝臓内科) 主任教授 長沼 誠 先生

まず最近の新型コロナ感染症と炎症性腸疾患:IBD(潰瘍性大腸炎 クローン病)の状況ですがIBDで感染した方のうち約80%が50歳以上、死亡された方のうち90%が50歳以上です。50歳以上の患者さんはこれまで通りの注意が必要です。ステロイド イムラン 心疾患があると重症になりやすいです。抗TNF-α抗体(レミケード ヒュミラ シンポニー)、ステラーラは使用していても重症化のリスクにはなりません。エンタイビオは少しリスクがあります。

潰瘍性大腸炎を発病すると30年で約20%の方に大腸癌が発生するデータがあります。潰瘍性大腸炎から発症した大腸癌を 大腸炎関連悪性腫瘍:Colitis-associated carcinoma:CACと呼びます。CACは大腸カメラで早く発見しても病気が進行する場合もありますが総じて早期発見できれば命にかかわることはありません。発生部位はS状結腸から直腸で80%ぐらいを占めます。生検は怪しいところを生検でよいですが直腸はランダムに生検してもよいです。CACは発赤があり 平坦 または隆起がわずかな病変が多いので NBI, 色素散布も有用です。サーベイランス(症状がなくても癌の早期発見のために大腸カメラ)をするのは海外のガイドラインでは一般に8年後からとされていますが そのスタート時期は病状などにより 病気になってからの期間が短くても発癌することがあるので 患者さんによって異なります。CACができやすいタイプの患者さんは:ステロイド使用歴のある方、全大腸型、罹病期間が長い、治療にも関わらず下痢 下血などの症状が完全にとれなく慢性に経過している(慢性持続型)、狭窄がある、炎症性ポリープがある、腸管が短縮している、などです。CACの予防には炎症をおさえることが最も大切です。つまり治療により下痢 下血 血便をなくし寛解状態を長期に維持することが最も大切です。但し個々の薬剤(5-ASA製剤、レミケードなど)ではCAC予防効果は証明できた場合とできない場合があります。