2021/11/4

5-ASA治療のbrush up ~基本治療と応用~

 

大阪府立医科薬科大学の中村先生が5-ASA製剤(ペンタサ アサコール リアルダ)の最近のトピックスを紹介してくれました。潰瘍性大腸炎を新たに発症した患者さんの約40%がステロイドの全身投与が必要となります。短期的には75%が病状改善しますが 約4年たつと そのうちの75%は難治化します(依存例:50%、抵抗例:25%) ステロイド全身投与しなくてすんだ60%の患者さんが将来難治になるのは約10%です。ですから最初が肝心で初期治療はステロイド非投与を目指します。ステロイド全身投与を避けるには5-ASA高用量+局所療法が必要となります。5-ASA製剤(ペンタサ アサコール リアルダ)が効果を発揮するには大腸粘膜5-ASA濃度の上昇が大切ですが ペンタサはバラツキはすくないですが濃度が低めです。リアルダ アサコールは消化管のPH上昇により5-ASAを放出します。成人の約20%は大腸のおいてもPH<7、10~20%は空腸でPH>7であるため アサコールは大腸粘膜5-ASA濃度のバラツキが大きいです。そのためゴーストピル(お薬が割れなくてそのままででてしまう)が多いようです。リアルダはアサコールよりも少し低いPHで割れるのでゴーストピルは少なめです。

最近 5-ASA製剤が副作用のため服用できない患者さん(5-ASA不耐)が増加してきました。頻度は10%程度 クローン病より潰瘍性大腸炎に多く 日本人でその割合は高く 関与する遺伝子異常も指摘されています。5-ASA不耐のうち70%は投与2,3週間後に発熱や高度下痢、CRP異常高値と共に出現する5-ASAアレルギーで 残りの30%は膵炎 肝炎、肺炎 腎炎などです。5-ASAアレルギーはいったん良くなった後に急に発症するのも特徴です。また症状の割には内視鏡所見は悪くありません。5-ASA不耐の方は長期でみると予後が悪く手術に至る例が多いです。アレルギーの程度が軽症であれば DLST(薬剤によるリンパ球刺激試験)陰性の患者さんは5-ASA変更(成功率:40%程度)、DLST陽性では脱感作療法(少量より投与開始し症状がなければ漸増していく)を行います。症状が重篤であればステロイド+イムラン、エンタイビオ ステラーラ投与などを考慮します。同じ5-ASA製剤でも坐薬や注腸剤、サラゾピリンは使用可能です

また内視鏡的完全粘膜治癒(MES:0)に到達すれは5-ASA製剤減量しても再燃しにくいです。臨床寛解でも便中カルプロテクチン>300,または内視鏡でわずかな炎症(MES:1)であれば可能な範囲で治療強化したほうが先々再燃しません。