2021/2/22 Takeda IBD 全国Webセミナー

(なるべく)失敗しない潰瘍性大腸炎の治療選択

-薬剤特性と確率論による治療アルゴリズム-

東北大学病院 消化器内科 助教 角田 洋一 先生講演

 

潰瘍性大腸炎治療の治療目標は粘膜治癒(MES≦1:大腸カメラで粘膜がほぼ治っている)です。潰瘍性大腸炎は活動期には下痢 腹痛 血便 下血などの患者さんを悩ますつらい症状がありますので治療(寛解導入)にはスピードと確実性が必要です。潰瘍性大腸炎の治療は長期にわたるので維持治療には安全性と継続性が必須です。現在多くのお薬が治療に使用されますが主治医はそれぞれのお薬の有効性 安全性 継続性 コストをよく知っていなければなりません。それだけでなく患者さんのこれまでの経過 社会背景 投与方法などの好みなども考慮してその患者さんにベストマッチするお薬を決定して行きます。5-ASA製剤(ペンタサ アサコール リアルダ)で副作用が出やすい体質かどうかは、遺伝子の傾向はわかってきましたがまだ臨床応用はできません。サラゾピリンは副作用が出やすい体質、遺伝子(NAT2遺伝子多型)がわかっています。ヒュミラもイムランを併用したほうが良い患者さんの体質はある程度わかっていますがまだ臨床では使用できません。潰瘍性大腸炎治療においてエンタイビオと抗TNF-α抗体(レミケード、ヒュミラ、シンポニー)を比較すると治験のデータでは同等ですが 実臨床のデータではエンタイビオのほうが成績がよいとする報告が多くなってきています。エンタイビオとヒュミラでは質の高い治験の成績でエンタイビオがヒュミラに勝っています。但しこれが意味するのはエンタイビオがヒュミラより優れているのですべての潰瘍性大腸炎患者さんにエンタイビオを最初に使う方が良いということではなく エンタイビオがよく効く患者さん ヒュミラがよく効く患者さん、ヒュミラとエンタイビオがよく効く患者さんがそれぞれ在るということです。潰瘍性大腸炎は治療前の効果予測は現時点では困難なのでお薬の特徴をよく理解したうえで患者さんの病像によくマッチするお薬を選択するように心がけたいものです。