2021/2/28 Takeda IBD 全国Webセミナー
慶應義塾大学 消化器内科 教授 金井 先生が炎症性腸疾患における腸管外合併症の講演をしてくれました。
エンタイビオの作用機序はインテグリンα4β7をブロックすることなので 基本的に腸管にのみ作用するので 多分、生物学的製剤のなかでは最も安全性が高いと思われます。治験の成績では半年後に臨床寛解の状態において 大腸カメラで検査するとMES2(中等度の炎症あり):55%です。このような患者さんは2年で80%再燃するのでエンタイビオで治療する場合は大腸カメラの所見が重くならないうちに開始したほうがよいでしょう。生物学的製剤未使用例では比較的早く効いてきます。
海外では潰瘍性大腸炎は原発性硬化性胆管炎(PSC)に高率に合併しますが PSCに合併した潰瘍性大腸炎の程度は軽症のことが多いです。またPSCの発症原因の一つとしてクレブシエラニューモニアの感染があります。腸管外合併症で炎症性腸疾患と病状が平行するものとして:結節性紅斑 スイート病 口内炎 強膜炎、平行しないもの:仙腸関節炎、どちらでもないもの:壊疽性膿皮症、PSC、ブドウ膜炎、末梢関節炎、
皮膚病変はクローン病で10% 潰瘍性大腸炎で5%合併するといわれています 結節性紅斑は潰瘍を形成しません。壊疽性膿皮症は小さい外傷が契機になることがあります。スイート病はイムラン、NSAIDsが発症の誘因となることがあります。抗TNF-α抗体(レミケード ヒュミラ シンポニ)の20%に何らかの皮疹が伴い5%が乾癬様の皮疹です。長期間の暴露がリスクですがイムランを併用していると発症しにくくなります。
IBDに伴う末梢関節炎は潰瘍性大腸炎の5~10%、クローン病の10~20%に合併し 通常骨破壊をきたしません。4関節以下の場合は下肢の大関節に好発し急性に痛みを伴う腫脹を生じます 再発しやすいです。腸病変の活動性と相関するとされています。5関節以上の多関節の場合は対称性に小関節に好発します。腸病変の活動性と相関しません。 一般には潰瘍性大腸炎 クローン病の治療強化が関節炎の治療になります。抗TNF-α抗体は関節炎 皮膚病変、眼病変のどれにも効果がありますが エンタイビオは腸管外合併症には効果はあまり期待できませんが 炎症性腸疾患と病状が平行する腸管外合併症には有効とする報告もあります。ステラーラは末梢関節炎には有効ですが脊椎関節炎には効果が落ちるようです。胃腸の手術で迷走神経を切除すると炎症性腸疾患のリスクになります。ニコチンパッチは潰瘍性大腸炎に効果がありますが副作用の頭痛などがひどく実臨床では使用できないと思われます。