2021/2/6 九州IBD Circle

潰瘍性大腸炎に対するべトリズマブ(エンタイビオ)の使用経験

クローン病の長期予後改善を目指して -カプセル内視鏡の可能性-

クローン病の治療戦略を再考する

荻野 治栄先生(九州大学)、江崎 幹宏先生(佐賀大学)、平井 郁仁先生(福岡大学)

 

上記の演題で九州にいらっしゃる著名な先生の講演があったのでクローン病に関しての内容をまとめてみます。

ガイドラインはエビデンスを基に4年毎に改定します。治療指針は専門家のコンセンサスも含めて毎年改定されます。クローン病ナイーブ症例(まだバイオ製剤が使用されていない患者さん)に対する抗TNF-α抗体(レミケード)の成績は5年で70%の患者さんが手術を回避でき、5年で50%の患者さんがレミケードを継続していました。2次無効(最初にお薬の効果があって下痢 腹痛 発熱などの症状がよくなったのに だんだん効かなくなり下痢 腹痛などの症状が再発する)がバイオ製剤の問題点の一つですが レミケードまたはヒュミラを投与中に2次無効になった時はまずはステロイドや経腸栄養を併用します。これで効果がなければ 倍量投与や期間短縮投与を試します これでだめなら レミケードならヒュミラに変更 ヒュミラならレミケードに変更します。これでもだめならエンタイビオかステラーラに変更します。また最初に投与するバイオ製剤がエンタイビオでもレミケードでも長期の効果はかわらず副作用はエンタイビオの方に感染が少ないとする論文もあります。クローン病の手術の多くは小腸病変ですがヒュミラを投与しても小腸病変は2年で50%もあるとされています。また潰瘍が治った結果狭窄する場合もあります。手術を回避するには小腸狭窄に対しては小腸内視鏡によるバルーン拡張が有効です。半年後に50%程度は再狭窄しますが拡張術自体の合併症は少なく(5%) バイオ製剤やイムランを併用すると手術回避の効果がより良くなります。クローン病患者さんの70%~80%に小腸病変があり約10年すると狭窄や瘻孔ができてきます。このような合併症は大腸よりも高率に起こります。小腸病変を早く見つけて大きな潰瘍になる前(early Crohn)に治療すると手術を防げます。小腸カプセル内視鏡で検査をすると上部小腸にも線上びらん 縦走配列 輪状配列した病変が見つかることがあります。小さい病変は経過観察できますが1㎝を超えるような大きさの潰瘍は治療したほうがよいでしょう。小腸カプセル内視鏡検査の合併症に滞留がありますがクローン病疑いの患者さんでも引っ掛かることがあるので注意が必要です。小腸カプセル内視鏡を用いて症状がなくても潰瘍があれば治療を強化していくと将来手術が減ると思われます。瘻孔があるクローン病患者さんはレミケード ヒュミラ ステラーラがよいでしょう。腰が痛い患者さん(仙腸関節炎)はレミケード ヒュミラがよいでしょう。エンタイビオで治療し腸がよくなると関節痛もよくなる方もいます。