2021/3/11 Stelara Digital Symposium

潰瘍性大腸炎における実診療のClinical Questionに答える

 

①診断から基本診療のポイント:東邦大学 松岡先生のレクチャーです。潰瘍性大腸炎は週から月単位で下痢 血便 腹痛が慢性に継続します。「○月○日から血便」は感染性腸炎が疑われます。ステロイドは投与する際は十分量(経口:30~40mg/日、静注:1mg /㎏)使用し3ヶ月以内に必ず中止し維持治療には用いません。一度ステロイドが中止になったが再燃する患者さんにはアザチオプリン(AZA)を用います。海外ではAZAの副作用で悪性リンパ腫の発症(5倍のリスク)が懸念されますが日本人には少ないようです。投与前にはNUDT15を必ずチェックして急激な白血球減少と全脱毛が効率に発症するリスクホモ(Cys/Cys)の患者さんには投与しません。Arg/Argの患者さんには50mg/日で開始して2~4週後に採血で副作用がないか確認します。150mg(3錠)まで増量可能です。Arg/Cysの患者さんは慢性に白血球 血小板の減少が出現することがあります。肝機能障害にはロイケリンに変更するとよいでしょう。膵炎を起こした場合は再投与しないほがよいでしょう。吐き気には朝 夕に分割して投与します。

②難治例に対する治療のポイント:札幌医科大学の仲瀬先生のレクチャーです。バイオ製剤使用中に結核が発症することがありますがその時バイオ製剤を中止すると結核が増悪するので中止せずに結核の治療を行います。難治例にはクロストリジウムディフィシルやサイトメガロウィルスなどの感染症の除外が必要です。

③診療モニタリングツール活用のポイント:杏林大学 久松先生のレクチャーです。現在日本で使用できるバイオマーカーは便中カルプロテクチンとLRG(血液検査)です。これらが正常値になると内視鏡でも粘膜治癒しています。便中カルプロテクチンは症状が出現する2ヶ月前から上昇しますが腸の炎症や疾患、お薬(癌 NSAIDsなど)でも上昇します。直腸炎で感度が落ちるのと測定キットによりカットオフ値が異なります。現在は潰瘍性大腸炎しか保険適応はありませんが近々クローン病でも測定できるようになりそうです。便潜血反応は上行結腸などの右側に病変があるときは感度が低下します。LRGは疾患活動性と比例しますが潰瘍性大腸炎に特異的なマーカーではありません(癌 肝硬変 糖尿病 乾癬 SLE 関節リウマチなどで上昇します)患者さんによってどのバイオマーカーを使用するのがよいか見つけることが大切で、継続して測定するとよいです。このデータを示すことにより患者さんと治療経過を共有して理解を深めるのに役立ち、これがアドヒアランスの向上に結びつきます。