2021/3/25 Stelara Digital Symposium

潰瘍性大腸炎の病態とステラーラの位置付けを考える

 

上記の演題で基礎医学を滋賀医科大学の安藤先生、臨床経験を札幌厚生病院の本谷先生が講演してくれました。安藤先生の腸管免疫の講義は大変興味深いのですが小生の理解が悪いために解釈が間違っていたらすみません。腸管内には100兆個の腸内細菌が存在しその働きは食物繊維を分解してエネルギーに変換することです。潰瘍性大腸炎の腸内細菌の構成は健常人とあまり変わりありませんがクローン病はかなり異なります。クローン病は菌数が減って、特に酪酸産生菌が減少しその結果 調節性T細胞が誘導されなくなり免疫異常が起こってきます。クローン病の病態はマクロファージとリンパ球が主体です 潰瘍性大腸炎は形質細胞と好酸球で特に好酸球が多い場合はステロイドがよく効くようです。また上皮細胞 間質細胞も関与します。ステラーラはIL-12とIL-23の両方を抑える生物学的製剤ですがIL-12は急性期の炎症 IL-23は慢性期の炎症に関与します。IL-23は記憶性T細胞や小腸に多いnatural killer cellを活性化する働きがあります。難治性潰瘍性大腸炎患者さんの治療において 白血球除去療法は安全性が優先される高齢者や若年者に有用です。プログラフは短期間の効果は高いですが維持治療に使用できません。ゼルヤンツは血栓症のリスクが高い患者さんには使用しないほうがよいでしょう。抗TNF-α抗体(レミケード、ヒュミラ、シンポニー)もクローン病ほどは潰瘍性大腸炎の治療成績はよくなくて 最初から全く効果がない場合(1次無効)が40%以上あり 投与開始後4年経つと治療を継続できている方は半数以下になります。エンタイビオの好適症例はステロイド依存例 中等症で、ステロイド抵抗例には効果ありません。CRP>2、AlB<3, Hb<10, MES≧3の症例には効果ないようです。1年後まで投与継続できると以後の多くの症例が長期に維持投与可能です。ステラーラは効果が十分発揮されるためには2回目投与以後に治療効果判定したほうがよく 抗TNF-α抗体の効果減弱例にも有用ですので 中等症から重症症例にはエンタイビオよりステラーラを投与した方がよいでしょう。