2021/4/15 第107回日本消化器病学会イーヴニングセミナー

クローン病治療における生物学的製剤の功績と課題から今後の治療戦略を考える

 

名古屋大学の中村先生と佐賀大学の江崎先生がクローン病小腸病変に対する診断治療のポイントを講演してくれました。クローン病治療の目標は臨床寛解(CDAI<150)、外科手術の回避ですが クローン病診療での問題点は腹痛 下痢 嘔吐、発熱などの症状が出たときには外科手術が必要な病態になっていることがある点です。特に小腸の病状評価が困難で CDAIと病勢が相関しません。下痢症状は主として大腸に由来し治療により回復できることがありますが 小腸病変が原因の腹痛は強い狭窄、発熱は膿瘍 瘻孔などをきたしていることがありこの様なときは外科手術をしなければならない時があります。クローン病の小腸病変を評価する手段として小腸カプセル内視鏡検査がありますが狭窄がある患者さんには検査できません。逆にこの検査ができた患者さんは悪くなりにくく 無症状でも検査で潰瘍などの所見がある方にバイオ製剤などで治療を強化するとさらによくなります。(ルイススコア>270の患者さん)小腸カプセル内視鏡検査が試行可能かを知るためにこの検査の前にパテンシーカプセル(PC)を服用しますがPC自体で腹痛や腸閉塞をおこすことがあります(PC自体、またはコーティングフィルムで閉塞を起こすため) PCによる腸閉塞を防ぐためには事前にMREを行い 2cm以上の狭窄や 狭窄が2個以上ある症例はPCを避けた方がよいでしょう。クローン病治療におけるバイオ製剤の使い分けですが肛門病変は下痢、腹痛などの症状が強い方は抗TNFα抗体(レミケード ヒュミラ)がよくて 小腸に狭窄がある患者さんはステラーラのほうがよいかもしれません。また治療後の評価として粘膜治癒も大切ですがクローン病はCTやMREで粘膜全体も改善したほうがさらに手術を回避できます、ステラーラは下痢 腹痛 体重減少などの症状の改善だけでなく QOL 身体的活動度 生産性、精神症状などの向上にも役立ちます 好適症例はバイオ製剤が1剤までで 病状が重くなく 肛門病変が軽いかたです。