2021/4/16 第107回 日本消化器病学会 モーニングセミナー

モニタリングが開く5-ASA治療の新時代

 

京都府立医科大学の高木先生と岡山大学の加藤先生が講演してくれました。

5-ASA製剤は通常の内服薬とは作用機序が異なり血液中に入ると効果はなく 直接大腸粘膜に張り付いて効果を発揮します。経口薬ですが作用は局所製剤に似ています。効果は服用量が増加すると高くなり副作用は増加しても変わりありません。5-ASA製剤のみで治療可能な症例は貧血、CRP上昇がなく内視鏡で大きな潰瘍がない場合です。坐薬は使用できれば併用したほうが効果は上がります。お薬を減量するには粘膜治癒が目安になります。再燃したときは決まった量を本当に服用しているか確認が必要です。一つの5-ASA製剤で効果がなくなったとき他の5-ASA製剤に変更する場合はサラゾピリンが最も効果があります。但し副作用も多いので注意が必要です。5-ASA製剤を初めて投与した時は5-ASAアレルギーに注意が必要です。あたかも潰瘍性大腸炎が悪化したような印象を受けます。また少ない量では飲めますが増量すると発症することもあります。もし起こった場合は症状が軽い時はサラゾピリンや顆粒状のペンタサを少量から投与すると服用できることもあります。

潰瘍性大腸炎は粘膜治癒を目標に治療します(達成、維持すると入院 手術が減るので)が大腸カメラをするかわりに粘膜治癒を反映する臨床データをモニタリングしていきます。以前より使用されているものとして CRP 血小板数などがあります。最近は便潜血 便中カルプロテクチン(FCP) LRGなどがあります。患者さんによってどのモニタリングツールがよいか異なりますので データをよく眺めて患者さんそれぞれにツールを決めておくことが大切です。下痢 下血 腹痛などの臨床症状が最も大切ですが直腸に炎症がないと症状がでないこともあります。モニタリングツールはいずれも経過をみることが大切です。便潜血はすぐに結果がでるのが良い点です。陰性なら粘膜治癒 陽性なら潰瘍があると考えます。潰瘍性大腸炎患者さんにFCPをうまく利用してもらうためには発症したら最初に外来受診のさいには便を持ってくるものだと教えておくとよいでしょう。CRPは潰瘍性大腸炎の場合かなり炎症があっても上昇しないことがあります。貧血は適切な治療が行われていない期間を反映します。