2021/4/4 重点卒後教育セミナー

慶応義塾大学 予防医療センター 岩男 泰 先生講演

炎症性腸疾患関連腫瘍の内視鏡診断と治療

上記の演題での講演でしたが今回は潰瘍性大腸炎(UC)に関連した腫瘍(UC-associated neoplasm : UCAN)に関した内容でした。潰瘍性大腸炎が発症して年数を経ると大腸癌が一般の方よりも多く発症してきます。長く続く炎症→異形→腫瘍(発癌)となります。UCANの頻度は以前と比較すると減少してきています。治療がより良くなったことと癌を発見するために行う大腸カメラ(サーベイランス内視鏡)が普及してきたことがその理由でしょう。潰瘍性大腸炎が原因でできた癌を大腸カメラで観察すると 領域を持った、濁った発赤のように見えます。色素を散布すると見えやすくなります。場所は直腸 S状結腸に多く 多発します。UCANは平坦で隆起しにくく初期に発見しにくいのが困ったところです。また表面はおとなしくて早期がんのように見えても浸潤していて進行がんのこともあります。早期に発見できれば大腸癌と治療成績はかわりませんが進行すると成績が悪くなります。統計によると 潰瘍性大腸炎より大腸癌が発生した患者さんの1/3は40歳以下ですので癌を早期に発見するためのサーベイランス内視鏡が大切です。若年発症、経過が長く 炎症範囲が広く 内視鏡上の炎症程度が強く 管腔狭小化 炎症性ポリープ 瘢痕 鉛管状などを呈する患者さんは発癌のリスクが高いので大腸カメラを定期的に受けたほうがよいでしょう。潰瘍性大腸炎が原因できた大腸癌の表面は早期癌に見えても浸潤癌のことがあり 多発するので治療は基本的には大腸全摘になります。UCANの内視鏡治療は慎重に行うほうがよいでしょう。