2021/5/20 Takeda IBD 全国Webセミナー
1.便中カルプロテクチン(FCP)の有用性について
2.血中LRGの有用性について
上記の演題でFCPは東邦大学の松岡先生 LRGは岩手医科大学の仲先生が これら新規バイオマーカーのIBD(潰瘍性大腸炎 クローン病)における使用方法を講演してくれました。潰瘍性大腸炎 クローン病の診療の治療目標は「病気が発症する前と変わらない生活をずっと続けられるようにする」ことです。そのためには炎症を完全にコントロールすることが必要で そうすれば粘膜治癒(大腸カメラで潰瘍がまったくない、粘膜の状態が発症前の状態に戻っている) 組織学的治癒となりその結果 再燃、入院、手術が減って上記の目標に近づくことができます。このために病状を的確に把握して必要があれば絶えず治療を変更していきます。病状を的確に把握するための手段として 下痢 下血などの症状、大腸カメラなどの内視鏡検査以外に 簡便で繰り返し測定でき炎症を正確に反映するバイオマーカーが必要です。便中カルプロテクチンは粘膜治癒を確認するための定性検査と考えるのが適当で 腹痛 下痢などの症状がなく 血便 下血もなく FCP<50ならばほとんどの場合 粘膜治癒が達成できており 大腸カメラを急いでする必要はありません。FCPの高低は重症度を反映していません。また早期のモニタリングには適しません。潰瘍性大腸炎以外で腸に炎症があれば上昇し 消炎鎮痛剤 プロトンポンプ阻害薬の服用時、胃潰瘍 肝硬変などでも上昇します。LRGは肝臓だけでなく炎症局所で産生されるマーカーなので粘膜治癒より炎症の程度を鋭敏に反映します。潰瘍性大腸炎では直腸炎の病状評価 クローン病では小腸病変の評価に役立ちます。実際の診療においては下痢 下血 腹痛などの症状が改善したらLRGで炎症の鎮静化を確認しその後FCPで粘膜治癒の判定をするとよいでしょう