2020/6/23ゼルヤンツ潰瘍性大腸炎適応症追加3周年記念Web講演会

「病態生理からみた潰瘍性大腸炎治療のトータルマネージメント」大阪大学の新崎先生

「ゼルヤンツの適正使用と新たなエビデンス」東京医科歯科大学の長堀先生

以上の演題でレクチャーがあり

「ゼルヤンツ追加適応後3年、潰瘍性大腸炎治療にどの様な変化をもたらせたのか?   ~臨床経験を振り返って~」との表題で 中村先生 猿田先生 渡辺先生 小林先生を交えた日本の炎症性腸疾患をリードする蒼々たるメンバーでのdiscussionがありました。

炎症性腸疾患の遺伝的素因としてはサイトカイン関連遺伝子が多いのですがこれのみでは説明できず 腸内細菌 遺伝的素因 環境因子の3要素が重なり合って免疫細胞の異常活性化により発症します。プログラフ サンディミュン、イムラン、アザニン、ロイケリンなどの低分子化合物はT細胞受容体を介したシグナル伝達を抑制して 抗原提示細胞を起点としたサイトカインのアンバランスを是正することにより効果を発揮します。JAKはT細胞分化、IBD関連遺伝子に広く関与しますが ゼルヤンツはJAKを使用したシグナル伝達を抑制し多くのサイトカインを減少させます。JAK には多くの種類がありサイトカインによりJAKの組み合わせが異なります。またJAKを使用しない代表的なサイトカインはTNFα、IL-17などです。

ゼルヤンツの治験データでは血便は投与後3日程度で改善し 便回数 全身状態などを含めると2週間ぐらいで改善します。投与後4週で効果がでるとその先1年は有効です。副作用は感染症全体ではプラセボより増加しませんがやはり帯状疱疹が 東洋人 65歳以上 20mg投与でより増加します。帯状疱疹は早く診断して早く治療することが最も大切で、その程度が軽ければゼルヤンツ休薬の必要はありません。ゼルヤンツの利点は 経口剤では5-ASA 製剤を除くと寛解導入から維持まで連続して使用可能で、難治例でも外来で当日より治療が開始でき バイオ製剤の効果判定は4~6週後ですがゼルヤンツは2~4週で判定できます。バイオ未使用の潰瘍性大腸炎患者さんなら維持は10mg(2錠)で可能です。妊婦さん、以前癌があった患者さんには慎重投与です。副作用で高脂血症ではLDL上昇しますがHDLも上昇します。血栓は日本人では外国人ほど臨床的に問題にならないようですがその予防にはD-dimerのチェックや生活指導が大切です。難治の入院症例には安全性を担保したうえでバイオ製剤との併用で治療する選択肢もあります