2021/7/12 Takeda短腸症候群全国Webセミナー

本邦における成人の腸管機能不全(IF)と短腸症候群(SBS)の現状と栄養管理

~クローン病を中心に新規治療薬レベスティブを含めて~

 

上記の演題で大阪医科薬科大学の中村先生が講演してくれました。クローン病は現在8万人ぐらいの患者さんがいて 毎年約2000人程度増加しています。病変は回盲部に好発し80%に小腸病変、肛門病変があります。典型的には大腸カメラで 大腸に3条 小腸の腸間膜付着側に1条の縦走潰瘍を認めます。このため病初期から高率に栄養障害を認めます。クローン病は再燃寛解や手術を繰り返しながら消化管障害が蓄積され その機能が徐々に荒廃していく疾患です。その結果、短腸症候群になる患者さんが残念ながらいらっしゃいます。狭窄 瘻孔ができる前にバイオ製剤(レミケード ヒュミラなど)で治療することが重要です。レミケードでクローン病治療が可能になった2002年以後 1度手術した患者さんの再手術率はその前より減少しました。また術後にレミケードを投与すると投与しない場合より次の手術率も減少しました。初診時にすでに狭窄瘻孔を有する重症な患者さんもいるのでレミケードを投与しても初回の手術率は減少していません。クローン病の手術は小腸で多く、原因の多くは狭窄です。手術を繰り返すことにより日本人ではクローン病で手術した患者さんの約4%が腸管機能不全に陥っています。クローン病で短腸症候群になった患者さんには回腸ストーマが多く 残りの小腸が健常でないので残存小腸が2m以上あっても機能不全を呈することがあり 一度 在宅経静脈栄養(自宅で点滴治療する)が必要になるとそこから脱することは他の疾患が原因の場合より低率です。在宅経静脈栄養は大変不便で患者さんのQOLは非常に低下します。腸管機能不全は 水分 VB12 Na  Mg  K  胆汁酸などの吸収低下により 低Na性脱水 低Mg血症 高ガストリン血症による胃酸分泌 蠕動の亢進などが起こります。骨粗鬆症もおこります。治療としては 補液 ソリタT3顆粒 Mg注射 ガスコン フラジール ウルソ 膵酵素阻害剤 倍量希釈したエレンタールなどです。塩酸クロニジンも短期的には有用ですが低血圧などの副作用のため長期には使用できません(もちろん保険適用外です)今回臨床で使用できるようになったレベスティブはGLP2analougで1日1回筋注します。小腸絨毛の成長促進 陰窩の発達などにより小腸の表面積が広くなって短腸症候群治療に有用です。日本人での治験の成績では2年継続して治療すると平均1日1L排液が減って 約60%の患者さんで排液の減少を認め、自宅での全経静脈栄養より20%の方が離脱できました。