2021/7/14 IBD最新情報Webセミナー

潰瘍性大腸炎のこれからを考える

 

以上の演題で東京医科歯科大学の竹中先生と北里大学北里研究所病院の小林先生が講演してくれました。竹中先生はこれからの大腸カメラと組織学的検査(生検)の意義を教えてくれました。内視鏡所見と組織学的所見が乖離する場合があります。内視鏡所見(大腸カメラの見た目)が寛解(健康時の元の粘膜に戻っている)なら次の治療目標は組織学的寛解になる(生検で炎症がない) 研究では生検組織はGeboesスコアで判定 全大腸内視鏡検査:寛解+組織学的寛解が最も再燃しにくいのでこれを目指すほうがよい(実臨床ではなかなか大変ですが)確かに実際に大腸カメラですっかりよくなっていてもその後すぐに下痢 下血 粘血便などで再燃する患者さんがいます。このような方は組織学的寛解ではなかったのでしょう。そうなると今後は内視鏡的寛解でも生検して組織を確認する必要がありますね。

小林先生は潰瘍性大腸炎でレミケード治療をしている場合に中止が可能かのお話しでした。

潰瘍性大腸炎を抗TNF-α抗体(レミケード ヒュミラ シンポニー)で治療しても年率10%~20%で再燃します。メタ解析では2年で約1/3が再燃します。いろいろなデータをまとめると潰瘍性大腸炎とクローン病で抗TNF-α抗体治療を中止すると約20~40%で再燃します。再燃後すぐに抗TNF-α抗体で再治療すると約80%が寛解になります。治療中止しても再燃しない要因はわかりませんでしたがクローン病ではイムランを服用していると再燃しにくいようです。抗TNF-α抗体治療継続の再燃に対する上乗せ効果は20%ぐらいです。日本人のデータでは レミケードで潰瘍性大腸炎を治療している患者さんが 内視鏡検査で寛解(MES 0または1)ステロイドフリー寛解が6か月以上継続を満たした場合 レミケードを中止すると2年後寛解維持できた方は50% レミケードを継続すると2年後80%寛解維持できました。再燃した時にレミケードを再投与すると70%で寛解になりました。休薬可能な条件でありそうなのは CRPが低め 組織学的な炎症が軽度でした。内視鏡的完全寛解(MES0)、イムラン併用、レミケードの治療期間、レミケードの血中濃度は休薬可能の条件にはなりませんでした。患者さんを選べば 「休薬後は厳密に経過観察して再燃の兆候があればすぐに再投与する」ようなことができるかもしれません