2021/9/10 ヒュミラ Internet Live Seminar

バイオマーカーを活かしたIBD診療の最適化

 

大阪大学 消化器内科の 新崎 信一郎 先生がバイオマーカー:LRG FCP、FITなどの炎症性腸疾患:IBD(潰瘍性大腸炎 クローン病)における使用方法を解説してくれました。

CRPはIL6の作用により肝臓から産生されます 潰瘍性大腸炎では活動性を反映しないケースがあります

便潜血:FIT FIT陰性は粘膜治癒:MES0を反映しますが 便の持参が患者さんとっては面倒なことです

便中カルプロテクチン:FCPは好中球の細胞質から放出される蛋白です。小腸病変の感度が大腸病変より低く変動しやすいので定性検査のように使用したほうがよいでしょう。日内変動 個体差 部位の差があるので同じ患者さんで継続して測定しその変動を追っていきます。NSAIDs、胃薬(PPI) 鉄剤を服用していると値が上昇します。妊娠中は値が低めになります。下痢 血便などの症状がなくてFCPが上昇すると3ヶ月後に症状がでてくることがあります。潰瘍性大腸炎ではFCP<50が半年以上継続した場合は5-ASAなどを減量してもよいでしょう。FCP>260では大腸カメラでの評価や治療の最適化が必要となります。内服薬のアドヒアランスのチェックにも利用できます。治療開始後10週でFCPが正常値化するような患者さんは将来再燃しにくいです。クローン病の小腸病変とも相関します。カットオフ値<100。潰瘍性大腸炎では粘膜治癒の判定にはLRGより優れています

LRGは好中球 マクロファージ、肝臓などで産生されSTAT3, NF-κβの両方の系の炎症で上昇します。炎症以外で膵癌 大腸癌、肺癌 卵巣がんなどでも上昇します。癌の懸念がある時はCEAと組み合わせます。CRP陰性の時に さらに詳しいマーカーになります。個体差の少ない検査値です。潰瘍性大腸炎 クローン病の両方で測定できますが特にクローン病において臨床寛解(下痢、腹痛などが全くない)のより鋭敏なマーカーで CRPや便中カルプロテクチンより優れています。CRP<0.3かつLRG>16の場合 大腸病変がなければ小腸病変が存在することを示します。今後再発を起こすことが考えられ治療強化をしたほうがよいかもしれません。カットオフ値<13ですが罹患部位によりカットオフ値が異なります

潰瘍性大腸炎でも再発のカットオフ値<13

バイオマーカーを利用して臨床寛解だけでなく粘膜治癒を目指すことが予後改善につながります。また大腸カメラ 小腸内視鏡検査を希望しない患者さんのモニタリングに使用できます