2021/9/28 ビオフェルミンWeb セミナー

腸内細菌の新たな知見と臨床応用の可能性

 

国際医療福祉大学 感染症学 主任教授 松本 哲哉 先生 講演

 

炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎 クローン病)は 遺伝 環境 腸内細菌などの因子がからむ多因子疾患です。幼小児期に発症した炎症性腸疾患は遺伝的素因の関与が大きいです。2歳までの抗生剤の使用がお子さんの喘息、帝王切開は母体の皮膚の常在菌が紛れ込むため お子さんのアトピー性皮膚炎に関連するという報告があります。これらを予防するには赤ちゃんが生まれ前からプロバイオティクス(乳酸菌)を摂取するとよいでしょう。血液中の分子の約半数は腸内細菌が有する酵素を利用して作られており 腸内細菌は全身の臓器の恒常性維持に寄与しています。炎症性腸疾患では腸内細菌の乱れ:dysbiosisがおこっており腸内細菌叢のバランスが悪くなっています。炎症性腸疾患が発症すると短鎖脂肪酸が減少します。プロバイオティクスの多くは乳酸、酪酸 酢酸を産生し 腸管上皮の抵抗力を強める、ムチン層の薄皮化も抑え 制御性T細胞の分化を誘導し小腸の炎症も抑制します。小腸は免疫寛容にも重要な臓器でプロバイオティクスの利用により特に酪酸の産生増加から上皮機能が強化され食物アレルギーを改善するとされています。抗生剤投与時にはビフィズス菌を投与することにより腸内細菌の撹乱を抑えることが示されています