2022/1/12 Ulcerative Colitis Web Seminar

潰瘍性大腸炎治療戦略 -長期試験結果からみたステラーラへの期待-

上記の演題で福岡大学の平井 郁仁 先生が司会をされ 東京医科歯科大学の藤井 俊光 先生が講演してくれました。

 

潰瘍性大腸炎からの発がんは発症後30年で約7%程度です。発がんのリスクは内視鏡的炎症 組織学的炎症です。発がんの特徴は

①発症年齢が若い

②好発部位は左側大腸(特に直腸)で 多発癌の頻度も高い

③肉眼的には平坦・扁平、びまん浸潤性で境界が不明瞭

④Dysplasiaを癌の近傍 または離れた部位に合併する頻度が高い(癌合併の可能性:DALM;43%, HGD;42%, LGD;19%)

便中カルプロテクチンは潰瘍性大腸炎、クローン病などの炎症の下痢なのか 過敏性腸症候群などの機能性の下痢なのか鑑別するのに役立ちます。

Clinical Inertia:臨床的な惰性;治療目標が達成されていない(治療強化が必要)にもかかわらず治療が適切に強化されていないこと。この状態が継続すると 治療が遅れ、疾患の進行をきたし より濃厚な治療が必要となる 特にクローン病では手術となる

この原因として 医師が治療内容の再考など適切な対応をしない または 新たな薬剤の開始を躊躇する 患者の治療へのアドヒアランスがよくない、医療システム、医療環境などがあげられます。

IBD新規治療の使い分け:precision medicine;個別化医療には薬剤効果予測のバイオマーカーが必要ですが 投与前に予測できるものでエビデンスレベルのものはありません。現在あるのは 導入後早期の臨床反応が良好 早期の薬物濃度が高いなどで 結局投与後の判定であるので実臨床ではあまり役に立ちません。現状では 重症度 病態 患者背景、治療歴などを勘案 考慮し 各薬剤の特徴、副作用を踏まえて選択しています

ステラーラの良い適応は難治性潰瘍性大腸炎の中等症で、外来で加療できる程度の患者さんです。頻繁に通院するのが困難な患者さんにもよいでしょう。生物学的製剤未使用例 既使用例いずれも投与可能ですが既使用例にも十分効果があります。投与すると1週間ぐらいで便回数が正常になるかたもいらっしゃいます。藤井先生の施設では投与後8週の寛解率50% 有効率70% バイオ製剤2次無効例で改善率50%だそうです。8週で寛解になった症例はその後長期に維持できます。ステラーラ投与開始後 次の投与の8週まで効果不十分の患者さんには局所製剤を併用するとよいでしょう。