2022/1/26 IBD最新情報Webセミナー

Biologics時代の潰瘍性大腸炎治療10年を振り返る

 

以上の演題で北里大学北里研究所病院の日比先生 銀座セントラルクリニックの鈴木先生などを中心に日本のオピニオンリーダーが討論してくれました。その中で関西医科大学の長沼先生がモニタリング 札幌医科大学の仲瀬先生が治療のことについて講演してくれましたのでそれらを纏めます。

潰瘍性大腸炎では治療目標は粘膜治癒 組織学的治癒です。メタアナリシスの結果より完全粘膜治癒(MES0)は粘膜治癒(MES1)より再燃のリスクを50%程度減じることができます。粘膜治癒していて さらに組織学的寛解達成すればさらに50%程度再燃が減ります。

また潰瘍性大腸炎では便カルプロテクチンと便潜血の両方でモニタリングするとより再燃を拾い上げることができます。最近 尿で測定するプロスタグランジンE2が潰瘍性大腸炎の新たなバイオマーカーとして報告されました。潰瘍性大腸炎でもクローン病でも治療目標に達する(粘膜治癒)とその後の予後は改善されます(入院と手術の減少)が 目標に達するためにバイオマーカーなどを用いて治療に介入するエビデンスは潰瘍性大腸炎では乏しいのが現状です。バイオマーカーの問題点は便カルプロテクチンとLRGは保険では3か月毎にしか測定できないのと 結果がすぐに確認できない点です。便潜血は保険適応がありません。将来は採尿や腹部エコーでモニタリングができると患者さんの負担が少なくてよいです。

潰瘍性大腸炎とクローン病は病態に関わるサイトカインが異なっています 例えば抗TNF-α抗体の1次無効は潰瘍性大腸炎では30%程度ですがクローン病では10%程度です。潰瘍性大腸炎では抗TNF-α抗体(レミケード ヒュミラ シンポニー)に抵抗性の場合 IL-7、JAK-STAT系が中心となっているようです。現状では投与前にどの薬剤が有効か判定することはできませんが 今後は薬剤ごとに有効性の因子(どのような患者に効果があるのか)を検討するのが大切です。