2022/10/27 JDDW2022 モーニングセミナー

便中カルプロテクチン(FCP)の有用性について ひだ胃腸内視鏡クリニック 院長 樋田信幸 先生が講演してくれました

 

炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎 クローン病)の診療において 大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査:CS)小腸内視鏡検査は確定診断 活動性の評価 粘膜治癒の評価 癌のサーベイランスなどに必須の大変大切な検査です。しかし大腸カメラ、小腸内視鏡検査を短期間に何度もすることは患者さんの負担が大きく、患者さんにとってはハードルの高い検査です。そこで大腸カメラなどの内視鏡検査をする代わりに粘膜の炎症がどの程度なおっているかを内視鏡検査をせずに推定できるバイオマーカー:便中カルプロテクチン(FCP)、LRG(血液検査)が最近 実臨床で応用されています。

FCPは粘膜への好中球浸潤を間接的に反映し 完全粘膜治癒:MES0(FCP<50)と粘膜治癒:MES1(極軽度の炎症が残っている)を区別できます。下痢下血などの臨床症状が自覚される3ヶ月前から上昇するので再燃予測マーカーとして役立ちます。便潜血:FITとFCPを組み合わせるとさらに再燃予測が精緻にできます。FCP(-),FIT(-)ならば1年後の再燃率:8%、FCPまたはFITのどちらかが陽性ならば1年後の再燃率:30%、FCP(+),FIT(+)ならば1年後の再燃率:70%とするデータがあります。可能ならFCPとFITを同時に測定すると再燃予測に有用で症状の出る前に治療強化することができます。FCPは便の検査ですので 医師の側は患者さんが便を持参することをいやがるのではないかと心配していますが 患者さんのアンケートでは患者さんはあまり負担に思っていないようです。FCPは再燃予測 粘膜治癒の確認に役立ちますので受診当日にその結果が出たほうが患者さんのアドヒアランス改善にも資するでしょう。