2022/10/28 JDDW2022 イーブニングセミナー

杏林大学 消化器内科 教授 久松 理一 先生

久松先生がクローン病の発病メカニズムとスキリージの治験の成績を講演してくれました。

 

クローン病はTh1細胞、Th17細胞が主態の病態と言われています。IL12/23はnaïve T細胞がTh1/Th17 T細胞に分化するのに不可欠なサイトカインです。

IL12/23経路の多くの分子が炎症性腸疾患感受性遺伝子として同定されています。腸炎においてIL12は全身の炎症に IL23は局所の炎症に関与します。炎症性腸疾患の腸管粘膜にはCD14陽性マクロファージが浸潤しIL12/23を放出しています。クローン病は発病初期にはIL12、活動期にはIL23が病態を形成しています。IL23は局所の炎症において非常に重要なサイトカインで リサンキツマブ(スキリージ)はp19に対する抗体であるのでIL23をブロックしTh17細胞の経路を抑制します。

スキリージの治験に組み込まれたクローン病患者さんは平均罹病期間:8年、CDAI:300, SES-CD:14, 生物学的製剤既使用群の割合:60%でした。この治験の特徴は大規模治験で初めてprimary end pointが12週の内視鏡的寛解に置かれた点です。12週の導入期において スキリージは内視鏡改善:40% 臨床寛解:44%とプラセボを上回る成績でした。生物学的製剤未使用群のほうが生物学的製剤既使用群より良い成績、でした。52週の維持期では内視鏡改善:47%、粘膜治癒:30%、臨床寛解:52%でプラセボを上回りました。CDAI≧300,<300で効果に差はなく(活動性が高くても有効)、4週間ぐらいで効果が出てきて 免疫調節剤の有無で効果に差はありません。痔瘻にも有効で52週では排膿のある痔瘻患者さんの60%で排膿がなくなりました。抗リサンキツマブ抗体の産生3% 中和抗体の産生0%で2次無効が少ないことが期待されます。52週の副作用は25%でプラセボと差がなく、多いものは上咽頭炎 関節痛などで特有のものはないようです。スキリージの特徴は安全性が高く 中和抗体産生が少なく 内視鏡的にも改善が確認された点です。