2022/10/28 JDDW2022 Morning Seminar

炎症性腸疾患患者における低亜鉛血症と亜鉛補充療法

上記の演題で大阪医科薬科大学の中村先生が司会をされ、北海道大学消化器内科IBDグループの桂田 武彦先生が講演されました。

 

亜鉛欠乏症の症状は 皮膚炎 口内炎 免疫機能の異常 創傷治癒遅延 脱毛症 食欲低下 発育障害 味覚異常 性機能不全 貧血などです。主な吸収部位は十二指腸 空腸で吸収率は30%です。通常では8~15mg/日の補充でよいですが炎症性腸疾患などの吸収不良状態では30~40mg/日の補充が必要です。栄養学では血清値で60~80mg/dl:潜在性亜鉛欠乏 <60:亜鉛欠乏症とされていますが炎症性腸疾患(IBD:潰瘍性大腸炎、クローン病)の患者さんでは<80を亜鉛欠乏症としています。IBDの患者さんは各種の微量元素が欠乏することが知られております。

潰瘍性大腸炎 クローン病ともに約40%の方が亜鉛欠乏症の状態にあるされ 亜鉛欠乏症を治療すると入院 手術 合併症のリスクが改善すると報告されています。その効果の機序としては炎症を起こすM1マクロファージの不活性化、tight junctionの機能改善による粘膜の透過性亢進の抑制などが想定されます。後ろ向きのデータですが 桂田先生のグループは潰瘍性大腸炎 クローン病の患者さんに亜鉛欠乏症の治療(ノベルジン:50mg/日)を行うと 活動性のスコア、CRPの低下, アルブミンの上昇 便回数の減少、全身状態の改善(何となく元気になる)、合併症の改善、内視鏡スコアの改善などを認めました。副作用は8%程度で腹部不快感や嘔気が主なものでした。ノベルジンが酢酸亜鉛であるからかもしれません、このようなときはプロマックで補充するとよいでしょう。経口鉄剤と同時に服用すると吸収障害がおこるかもしれないので時間をずらして服用するとよいです。クローン病患者さんで病状が落ち着いていてエレンタールを飲んでいないのに下痢が多い時は亜鉛を測定するとよいかもしれません。