2022/10/29 JDDW2022 ブレックファーストセミナー
コロナパンデミック下におけるIBD最新の治療
札幌医科大学 消化器内科 教授 仲瀬 裕志 先生がIBD特に潰瘍性大腸炎の病態を講演してくれました
炎症性腸疾患 特に潰瘍性大腸炎では上皮粘膜と免疫担当細胞の働きが重要です。消化管上皮はそのバリア機能が大切で異物の侵入を防ぎ体内をガードしています。発病前は上皮のバリア機能が破綻し抗原物質が組織内に侵入 発病すると組織の免疫細胞が活性化され 慢性になってくると免疫担当細胞が全身性サイトカインを産生し炎症が持続します。その結果 腸管組織が破壊され 狭窄 瘻孔 癌などの合併症が発症します。
治療の目標は まず腹痛 下痢などの患者さんの訴えを改善→内視鏡的寛解→組織学寛解まで達成が理想です。但し実際の臨床では組織学的寛解を数カ所の生検のみで評価できるのかという問題もあります。そのため粘膜 組織の評価を特殊な内視鏡機能を利用して評価する研究がすすんでいます。また組織学的寛解になっても粘膜内のサイトカインはその変動(特にIL12/23)を認めるという報告もあり さらに分子学的寛解まですすむとより理想的です。
組織学的寛解になっても腸内フローラの乱れ(dysbiosis)は残存しています。便移植は寛解期に行った方がよいのかもしれません。炎症性腸疾患は現在の医療では根治はまだ困難なので、日々の医療では症状が出ないように予防的にしていくことが大切です。そのためには再燃予測因子を見つけることと副作用の少ないお薬が重要です。