2022/12/16 第5回 IBDワークショップ

炎症性腸疾患と再生医療

上記の演題で岡山大学病院 炎症性腸疾患センター センター長の平岡 佐規子先生がご司会をされ 東京医科歯科大学 消化器内科 教授 岡本 隆一先生がご講演してくれました。

 

腸上皮は生体の内と外を隔てる「生体の最前線」です。腸上皮はクリプト底部にある幹細胞より分化します。炎症が起きた粘膜は腸上皮の再生が治癒につながります。粘膜治癒は腸上皮の再生と同義と考えられます。

オルガノイドは試験管内などの生体外で3次元的につくられたミニ臓器です。オルガノイドは、適切な物理的および生化学的刺激を与えることにより、初代組織または多能性幹細胞[iPS細胞(induced pluripotent stem cells)またはES細胞(embryonic stem cells)]から作製されます。東京医科歯科大学は、潰瘍性大腸炎治療のため、患者さん本人から採取した組織より作成した腸上皮幹細胞を含むオルガノイドを移植した経験があります。

内視鏡で正常な腸細胞を採取し オルガノイドを利用して体外で増殖させて患者さん本人に戻します。オルガノイドは移植されると幹細胞機能を発揮し上皮細胞を再生させます。内視鏡で潰瘍をねらってオルガノイドを局所に散布しシートでふたをして生着させます(上皮幹細胞移植)。バイオ製剤や経口の分子標的薬を用いた免疫調節治療に加え、上皮幹細胞移植を併用することにより理想的な粘膜治癒を達成できるかもしれません。クローン病ではiPS細胞を使用しオルガノイドで再生医療が行われようとしています。