2022/2/7 第1回 EA IBD ACADEMY in Kyushu:IBD栄養療法のA to Z

「IBDにおける栄養療法の変遷」 九州大学 梅野先生

「在宅経腸栄養療法の現状」 鹿児島大学 上村先生

 

上記の演題で今後の炎症性腸疾患界のオピニオンリーダーであるお二人の先生が講演してくれました。

 

炎症性腸疾患の発症機序: 免疫機構の破綻、腸内細菌の変化による腸管における過剰な免疫反応

炎症性腸疾患への食事の影響:腸内細菌叢の多様性に変化、特定の細菌の増加、腸管上皮バリアの透過性亢進、大腸ムチン層の破壊 食事抗原が直接免疫細胞に作用する

腸管内の環境因子が腸管免疫を制御する:小腸は食物依存 大腸は腸内細菌依存

アミノ酸(グルタミン ヒスチジンなど)や脂肪酸は抗炎症作用や上皮保護作用を有し 食物繊維は腸内細菌の餌となり短鎖脂肪酸(酪酸、プロピオン酸 乳酸など)を増加させ腸管上皮を保護します。また同時に調節性T細胞などに働きかけ過剰な炎症を抑えます。

クローン病 潰瘍性大腸炎は腸管に潰瘍ができる病気であるので 腸管へのストレスを減らすことは治療として重要であり、特に栄養吸収部位である小腸に病変を認めるクローン病は栄養療法が有効です

エレンタールを主とした栄養療法でクローン病は70%~80%寛解導入(CDAI:<150)でき レントゲン検査では90%で潰瘍の治癒を認めると報告されています 栄養療法は体重当たりの服用量が多くなれば寛解維持率が上昇しますが、Half ED:(1日900kcal~1200kacl摂取する)でも再手術抑制 寛解維持効果があります。抗TNF-α抗体(レミケード、ヒュミラ)を栄養療法(600~900~1200kcal)と併用すると 寛解導入 寛解維持 2次無効の予防 に役立ちます。エレンタール3P(900kcal)飲むとイムランと同等の寛解維持効果があります。

多い量を飲むほど良くなることはわかっているのですが 患者さんのアンケートではエレンタール3P(900kcal)以上服用できる方は40%以下でした。実際の臨床でも 最初は多く飲めますが 2年経つと3P以上飲めている患者さんは30%程度です。エレンタールを長期に多く服用し続ける事は大変困難なので 患者さんの性格や生活背景を理解し 医師だけでなく看護師や薬剤師も含めてチームでサポートすることが重要です。エレンタールで無理な時はラコールなどの半消化態栄養に変更するとアドヒアランスが改善する場合があります。