2022/4/15 Takeda Ulcerative Colitis全国Webセミナー

潰瘍性大腸炎治療の新時代

上記の演題で 慶應義塾大学の緒方 晴彦 先生が司会をして 滋賀医科大学の安藤 朗先生が講演してくれました。

 

炎症性腸疾患:IBD(潰瘍性大腸炎 クローン病)は遺伝的素因に環境因子が加わって炎症がとまらなくなり発症します。潰瘍性大腸炎とクローン病に遺伝的素因に大きな違いはありません。クローン病は健常人と腸内細菌叢が大きく異なり 多様性の低下 酪酸産生菌の減少を認めディスバイオシスが顕著で免疫異常が大きく関与しています。腸内細菌の変化 食事抗原の暴露によりヘルパーTリンパ球の持続的活性化が発症に関わっています。それに比べ潰瘍性大腸炎の腸内細菌叢は健常人とあまり変わりがありません。最近の研究では上皮細胞 間質細胞、基底膜などにまず変化がおこり 結果として2次的に免疫異常が惹起され 形質細胞や好酸球の過剰な浸潤が発生しTh2優位の免疫異常となります。潰瘍性大腸炎では 上皮細胞 間質細胞に由来するIL33や 上皮細胞と基底膜に発現するintegrin αVβ6に対する自己抗体が上昇しています。

エンタイビオは小腸 大腸にしか発現していない接着因子に対する抗体で Tリンパ球 好酸球の腸管への浸潤を阻止します(好中球は阻止しません) ですので薬剤の効果は腸管に限定され全身に影響しません。これが他の生物学的製剤との近いです。また生物学的製剤の効果減弱の原因の1つに抗薬物抗体の産生がありますがエンタイビオはその産生率が低いです(レミケード30%、ヒュミラ35%、ステラーラ8% エンタイビオ3%)結果として一度効果がでるとエンタイビオ投与継続率が高くなります。またこのように抗原性が低いので再投与しても投与時反応がおこりにくく安全に投与できます。エンタイビオは全身作用が少ないお薬なので新型コロナワクチン予防接種の抗体産生にも影響はあまりありません。エンタイビオの好適症例はステロイド依存症例で 投与中に軽度再燃したときは 経口ステロイドの短期投与や局所製剤の併用でしのぐとよいでしょう