2022/5/20ゼルヤンツ潰瘍性大腸炎m3Web講演会
ゼルヤンツの有効性について
ゼルヤンツの安全性に関するupdate
上記の演題 北里研究所病院の日比 紀文先生がご司会され、有効性については北里研究所病院の小林 拓先生、安全性については東邦大学医療センター佐倉病院の松岡 克善先生が講演されました。
ゼルヤンツはJAK阻害薬です。炎症性サイトカインの中には大別するとTNFαとJAKがそれぞれ関与する2つの系があります。治験の成績では短期の寛解導入ではバイオナイーブ例とTNFα不応例で成績に差がありません。実臨床では寛解導入率は30%程度です。有効な方には効果が迅速で投与後3日目で排便回数 直腸出血の改善を認めます。治験では2ヶ月で効果がなくても4ヶ月まで投与するとそうした患者さんの半数が有効になります。トータルすると投与開始後4ヶ月目で約80%の方に何らかの効果を認めます。投与2ヶ月目に有効であった患者さん(全体の60%)はその後の継続率は2年74%、5年55%です。生物学的製剤未投与で内視鏡検査で完全粘膜治癒:MES0になった患者さんは10mgから5mgに減量してもよいでしょう。休薬(投与期間2ヶ月で有効の後)すると50%再燃しますが再投与(10mg)で85%が再び有効です。経口剤を好む患者さん 抗TNFα抗体(レミケード ヒュミラ シンポニー)で治療がうまく行かなくなった患者さん、入院の重症例などがゼルヤンツのよい適応患者さんです。
プラセボ患者さんと比較できる1年までの治験のデータでは ゼルヤンツは重篤な感染症2%でプラセボと同じです。悪性腫瘍 リンパ腫も同じです。多い副作用は頭痛 鼻咽頭炎です、プラセボより多いのは帯状疱疹で年率7%です。一般の方の4~6倍のリスクになります。特に65歳以上 アジア人が高リスクです。日本のおける市販後全例調査では副反応は約30% そのうち重篤なものは4%でサイトメガロウィルス感染 帯状疱疹などでした。
日本人においても発症率は年率7%程度で 投与後どの期間でも発症し 若年者でも発症することがあります。但し入院するような重篤な帯状疱疹は少ないようです。海外のデータでは 高齢の心疾患や糖尿病など有する(65歳以上)リウマチ患者さんでは ゼルヤンツの使用で 重篤な心血管系の副作用(深部静脈血栓、肺塞栓症) 悪性腫瘍(肺がん)が少し増加するとされています。日本人の市販後調査では現在のところ 血栓症 心疾患 悪性腫瘍などの増加は報告されていません。