2022/6/25 IBD Club-Jr
今回の IBD Club-Jrの特集は潰瘍性大腸炎(UC)に関連した腫瘍(UC関連腫瘍:UC-associated neoplasm : UCAN)の治療方針についての討論でした。
まずUCANの組織診断は難しく、意外に広い・意外に深い・多発しがち・見つけにくい・病理医間の一致率も低い、再生上皮とdysplasiaの鑑別、LGDとHGDの鑑別、UCANと通常型腫瘍(Sporadic Neoplasm:SN)の鑑別も難しい 治療前のUCANとSNの生検の一致率は70%~80%です。UCANの組織学的特徴はp53陽性です 炎症の持続→low grade dysplasia(LGD)→high grade dysplasia(HLD)→癌と変化していきますが15年で約20%のLGDがHGD,癌に進行します。一方潰瘍性大腸炎にはSNも発生します。UCANとSNの鑑別が必要な理由は UCANは病変の境界が不明瞭で範囲診断が簡単でなく、同時性・異時性の多発が高率であるので大腸全摘が治療の原則です。それに対しSNであれば潰瘍性大腸炎患者さんでも局所切除で治療できます。UCANの診断は難しいのでSNをしっかり診断することが大切です。SNの可能性が高い病変は 隆起型で単発 辺縁が内視鏡でしっかり追うことができる、免疫染色でp-53:陰性、周囲にdysplasiaがない(内視鏡的 病理学的に生検において)です。UCAN に対する内視鏡治療はその後の予後やQOLを損なう(異所性 異時性の腫瘍の発症のため)可能性があるので適応に関しては慎重であるべきです。術前診断が隆起型のLGDであれば内視鏡治療も許容されるかもしれません。平坦型UCANは低分化癌を含んでいる可能性があり特に注意が必要です。内視鏡治療を選択する場合には患者さんのこれまでの治療歴も十分考慮しましょう。ただし潰瘍性大腸炎のESDは粘膜下層の繊維化 脂肪沈着 薄皮化などで技術的に難しいことが多いです。