2022/6/28 Crohn’s Disease Web Seminar

-StelaraⓇ for Small Bowel Disease-

Point-of-Care Ultrasound(POCUS)とステラーラによるクローン病診断と治療

 

上記の演題で 滋賀医科大学 消化器内科教授 安藤 朗 先生が司会をされ、川崎医科大学 消化管内科学 准教授 松本 啓志 先生が講演してくれました。

 

クローン病に対し抗TNFα抗体(レミケード ヒュミラ)で治療すると 炎症を抑制するのと同時に繊維化・筋層肥厚が進展しているため狭窄をきたしやすくなっています。IL12はナイーブCD4+T細胞に作用しTh1細胞への分化を誘導し IL23はTh17細胞への増殖に重要な役わりを果します。基礎研究ではTNFαを産生するマクロファージは大腸に多く IL23により活性化されるTh17細胞 ILC3細胞は小腸に多いとされています。また抗TNFα抗体治療抵抗性の原因としてIL-23抗体の発現亢進が関与しています。また抗TNFα抗体による粘膜治癒は小腸が大腸よりなおりにくいです。これらのことを総合すると抗IL12/23抗体であるステラーラは小腸で レミケード ヒュミラより効果があり、狭窄しにくく、レミケード、ヒュミラの治療に抵抗性の患者さんに有用であるかもしれません。またステラーラは小腸の絨毛を長くする働きもあるようです。

抗TNF-α抗体(レミケード ヒュミラ)で治療すると乾癬、喘息、薬剤性SLEなどの自己免疫性疾患が併発する場合があります。薬剤性SLEはイムランを併用していると発症しにくいです。dsDNA抗体 抗核抗体が活動性の指標になります。発症した際はステラーラに変更すると改善することがあります。抗TNF-α抗体で残った小腸潰瘍に対しステラーラの有効率は50%程度です。クローン病の狭窄は①炎症、②繊維性 ③炎症+繊維性 ④癌の4つのタイプがあります。狭窄した場合 慢性の浅い潰瘍は拡張できますが 新しくて深い潰瘍の拡張は避けた方が良いでしょう。バルーン拡張したら その後に炎症を抑える治療を追加すると再狭窄を防ぐことができます。拡張術後ステラーラで治療すると狭窄しにくくなります。回盲部の狭窄しそうな潰瘍があり CRPが高くない患者さんはステラーラが第一選択になります。抗TNF-α抗体で導入して狭窄が来る前にステラーラに変更して維持治療も可能です 狭窄しそうな小腸病変が多い場合はステラーラがよいでしょう 重症の場合はまずTPNで加療し小腸機能を回復したうえでバイオ製剤を導入します ステラーラを使用する場合はステロイド ゼンタコート イムランの併用を考慮します

クローン病小腸病変の評価には腹部骨盤造影CT、小腸X線造影、ダブルバルーン小腸内視鏡、小腸カプセル内視鏡検査 腹部エコーがありますが 腹部エコーは侵襲がなく、特別な前処置がいらないのが最も良い点です。最近 診療室・在宅ですぐに行うエコー:Point-of-Care 超音波(POCUS)がよく行われるようになりました。腸管の腹部エコーによりクローン病の活動性や腸閉塞の程度の評価ができるようになりました。将来は癌の鑑別などにも役立つかも知れません。