2022/6/29 ゼルヤンツ潰瘍性大腸炎適正使用講演会
難治性潰瘍性大腸炎内科治療の現状と問題点
~改めて実臨床におけるゼルヤンツの位置付けを考える~
上記の演題で 福岡大学 消化器内科 主任教授 平井 郁仁 先生がご司会され 大阪医科薬科大学 第二内科 専門教授 中村 志郎 先生が講演されました。
ゼルヤンツはJAK-STAT系のセカンドメッセンジャーを抑制する経口のお薬ですJAK-STAT系は自然免疫 獲得免疫の療法に関与しているのでゼルヤンツはmulti-cytokine blockerとして働きます。
治験の成績では3日目より出血 排便スコアが改善し 実臨床でも服薬の直後から症状が改善する患者さんもいらっしゃいます。また1年後のステロイドフリー寛解率も治験間の成績を比較するとゼルヤンツ:47%、ステラーラ:42%、ヒュミラ増量:40%でよい成績を残しています。治験では抗TNFα抗体(レミケード ヒュミラ シンポニー)の2次無効後に投与するときには2ヶ月間の休薬期間をおいてからゼルヤンツを投与しますが 実臨床では休薬期間などおかず連続的に投与するので有効性は治験の成績より上昇するかもしれませんが副作用も増加する懸念があります。8週投与で改善にまで行かなかった患者さんもすこしでも改善傾向があればもう8週間続けると計16週目には80%弱の患者さんに何らかの効果がありました。粘れる患者さんは4ヶ月(16週)で効果判定するとよいでしょう。
20mgから10mgに減量すると1年で約25%が再燃し 20mgに再増量すると40%ぐらいが再寛解導入できます。再燃リスクを少なくするには 減量する場合は寛解を半年以上継続し できれば内視鏡的完全粘膜治癒:MES0を達成してからがよいでしょう
実臨床では他剤薬剤無効例に投与するときは活動性が高くない患者さんがよいと思われます。レミケード→エンタイビオで効果がなくなった患者さんへの治療効果はステラーラとゼルヤンツは同等でした。
副作用ですが 長期試験のデータでは 心血管系 悪性腫瘍 肺塞栓症 深部静脈血栓症などの発症率は高くなく他のお薬と同程度です、帯状疱疹はリスクが3倍になりますが90%が非重篤で大半はゼルヤンツを中止せず帯状疱疹の治療をしました。一般にゼルヤンツより他の生物学的製剤のほうが安全性は高いです