2022/6/30 第3回EA IBD ACADEMY in Kyushu

潰瘍性大腸炎における5-ASA製剤のA to Z

 

「5-ASA製剤の全身投与について」長崎大学病院 消化器内科/医療教育開発センター 教授 松島 加代子 先生

「5-ASA製剤の局所投与について」福岡大学 消化器内科 講師 芦塚 伸也 先生

お二人の先生が5-ASA製剤についてまとめてくれ その後discussionがありました

 

サラゾピリンはメサラジンとスルファピリジン(SP)とから成り立っています。潰瘍性大腸炎に効果があるのはメサラジンです。経口投与で90%が大腸に到達します。腸内細菌の働きによりメサラジンとSPに分解されますがSPが大腸で吸収され頭痛 嘔気などの原因になります 他の副作用として骨髄抑制 無菌性髄膜炎 皮疹 葉酸欠乏 男性不妊などがあります。副作用は他の5-ASA製剤より高率で約15%が副作用のため中止になります。妊婦さんに投与する場合は特に妊娠3ヶ月までは葉酸補充することが必要です。中等症の患者さんには最大用量から投与しますが軽症であれば中等量で治療可能です。2週間ぐらいで効果判定します。効果が不十分な時は アドヒアランスの確認 5-ASA不耐 症状が激しくないときは他の5-ASA製剤への変更などを考えます。生物学的製剤で寛解維持している時5-ASAの併用に意義があるかはまだはっきりしていません。維持期は中等量(2g以上)にしますが再燃するときは最大用量に戻します。イムランと併用するとTPMP活性阻害作用により6-TGNの血中濃度上昇のため骨髄抑制などが増悪する場合があります。この作用のためイムランの有効性が増加し寛解維持により良く働くことにもなります。ペンタサはアサコール リアルダより小腸から吸収される量が多いので少し注意が必要です。

ペンタサ坐薬はもちろん直腸型に有効ですが直腸型以外の病型に投与しても有効です。直腸病変の改善は病型にかかわらず患者さんのQOLを改善するためです。直腸型には坐薬のほうが経口薬より有効ですがそんなに差はありません。経口薬と坐薬の併用は経口薬のみよりもっと有効です。維持療法の場合 注腸製剤は週2回程度の併用で経口薬単独よりも有効です。また5-ASA変更の時には局所製剤を併用しているほうがより有用です。局所製剤も経口製剤と同様の副作用が発症するときもあります。また注腸製剤で挿入方法の誤りにより腸穿孔を起こした症例報告があります。注腸はQOLが低くなる治療方法ですので開始するときは患者さんに「全部いれなくてよいですよ」「漏れてもよいですよ」などとアドバイスしておくと患者さんが受け入れやすくなります。

5-ASA不耐の患者さんが最近増加してトピックスになっています 病態を分類すると

○通常の薬剤と同様のアレルギーの病態による薬疹や肝障害など

○間質性肺炎 膵炎 心膜炎などメサラジンが原因と思われる腸以外の臓器障害

○下痢 血便など腸病変の悪化 潰瘍性大腸炎の増悪とは異なる