2022/6/6 Crohn’s Disease Web Seminar

-StelaraⓇ for Small Bowel Disease-

ステラーラのBest Useを考える

~小腸病変治療への可能性を含めて~

 

上記の演題で 滋賀医科大学 消化器内科教授 安藤 朗 先生が司会をされ、福岡大学消化器内科 主任教授 平井 郁仁 先生が講演してくれました。

 

クローン病は進行する病気です。日本人において発症後10年経つと炎症型20%、狭窄型40%、瘻孔型40%に進展し合併症も持つ症例が増加し10年後の累積手術率は約50%に達します。抗TNFα抗体(レミケード ヒュミラ)の実臨床への登場、その投与により 海外のデータでは初回の手術は減ってきました。2回目の手術も減りつつあります。回盲部手術は1回目 2回目ともに減少しています。初回の小腸手術も減っていますが2回目の小腸手術は減っていません。このようにクローン病小腸病変(特に狭窄)は予後を決定する重要な病変です。福岡大学のデータでは16歳未満で発症の若年クローン病患者さんでは10年間で抗TNFα抗体の累積使用率は70%ぐらいです。若年発症のほうが早期に導入されますが長期に経過すると使用率は大人で発症した患者さんもかわりなくなります。初診時に骨盤内小腸の狭窄 右側結腸の狭窄 上部消化管病変がある患者さんは将来腹部手術を受ける可能性が高いです。ステラーラは回腸末端の潰瘍に対し瘢痕を伴わず治癒します。レミケードは治癒するさいに瘢痕ができます。内視鏡が通過不可能な狭窄があった場合もバイオ製剤で治療するとそれ以上狭くなりません。エンタイビオでよくならなったクローン病患者さんに対しステラーラに変更するとよくなった経験例があります。治験の成績では生物学的製剤未使用の患者さんに対しステラーラとヒュミラの成績を比較すると1年後の治療成績、副作用は同等でした。またステラーラとレミケードは短期の寛解率 改善率は同等であると報告されています。潰瘍を伴う狭窄をバルーン拡張した後では生物学的製剤を変更することも考慮します。クローン病の手術を防ぐには 早期診断→適正な早期治療、腸管合併症(狭窄、瘻孔)の回避・対処、個々の症例に応じたテイラーメイド治療が大切です。