2022/7/20 Kyorin Web Seminar in 2022
妊娠・授乳期におけるIBDの管理
上記の演題で 横浜市立大学付属市民総合医療センター 炎症性腸疾患センター 准教授国崎 玲子 先生が講演してくれました。
日本では潰瘍性大腸炎の20%が難治例で、15%にバイオ製剤が投与されています クローン病では50%にバイオ製剤が投与されています。
基礎疾患や投薬の有無にかかわらず 妊娠異常は一定の確立で起こります:自然流産15%、不妊10%、低体重9% 早産5%、先天異常5-3%(心室中隔欠損、口唇口蓋裂、Trisomy 21の順) 妊娠前に投与された一般的な炎症性腸疾患(IBD:クローン病 潰瘍性大腸炎)治療薬が原因で将来 不妊や奇形を起こすことはまずありません。寛解期に妊娠すると 病気の活動性に影響はなく 児への悪影響はありません。活動期に妊娠すると 児の流産、早産のリスクが2倍、低出生体重のリスクが2~3倍、死産(クローン病)のリスクが4~5倍に増加すると報告されています。母体は2/3が病気の活動性が持続し うち2/3が悪化すると報告されています。これらのことからすると寛解を一定期間(3~6ヶ月)維持後に計画的に妊娠したほうがよいでしょう。IBD患者さんの妊孕性(妊娠しやすさ)は寛解状態では一般とかわりなく 全てのIBD治療薬も悪影響はありません。IBDが活動期であると特にクローン病は妊娠しにくくなります。難治の潰瘍性大腸炎患者さんに大腸全摘術を行うと やや妊娠しにくくなります。またIBDを煩っていることを理由に自主的に子供さんを持たないと考える患者さんが17%で一般の6%より多くなっています。本人および医療者が誤った認識を持つと子供を持てないIBD患者さんが増えます。添付文書上での妊娠中投与しないIBD治療薬は サラゾピリン、シプロキサン ゼルヤンツ ジセレカ カログラです。
授乳は 児の成長 発達 認知能力を向上させ 感染症罹患率 死亡率、疾患発症を下げる働きがあります。また母親のIBDの再燃率を下げます 理解不足や誤解から安易に授乳は中止させないことが大切です。授乳中 添付文書上投与しないIBD治療薬は サラゾピリン、イムラン アザニン プログラフ シプロキサン フラジール ゼルヤンツ ジセレカです。