2022/7/5 Crohn’s disease 全国Webセミナー

クローン病の内科治療戦略

JCHO東京 山手メディカルセンター 消化器内科 医長 酒匂 美奈子 先生

クローン病肛門病変に対する外科治療の現状と今後の課題

JCHO四日市羽津医療センター 副院長 山本 隆行 先生

 

札幌医科大学 消化器内科 教授 仲瀬 裕志先生が司会をされ お二人の先生がクローン病の肛門病変について内科の立場 外科の立場から講演されました。

 

クローン病の肛門病変の頻度はアジア人が欧米人より高く クローン病診断時には約50%の患者さんに   肛門に痔瘻などのクローン病による病変があります。

痔瘻癌の特徴は疼痛 おしりが固くなる コロイドの排出 MRIの変化などです。また治療後 長期に経過してから再発することもあります。痔瘻 痔瘻癌の画像検査ではCTよりMRIのほうが有用です。痔瘻はI型 II型 III型 IV型に分類できます。I型はバイオ製剤の適応になりません。II、IIIが切開排膿後に抗TNFα抗体(レミケード ヒュミラ)適応になります。抗TNF-α抗体のレスポンス:II:80% III:45%、IV:17% IVは難治で 再発しやすく 漏便が多く、ストーマになることがあります。クローン病自体の急性増悪の一部としての肛門病変の悪化はバイオ製剤のみで治療可能です。慢性炎症に伴って生じる瘻管には手術が必要です。 排膿のない状態をめざし 毎年MRIで評価することが必要です。痔瘻癌の早期発見は困難ですが それでも 年1回肛門専門の外科医に診察してもらい、単純MRIを毎年継続し 前年と比較し変化を認めた時や、癌化を疑う時は造影MRIを行います。

痔瘻の治療ですが 切開排膿は膿瘍腔の解放ですが それだけよりシートン挿入し術後に抗TNFα抗体を併用すると治療成績が向上します。手術で徹底的に炎症を除去しようとすると肛門機能低下につながります。難治で疼痛などのためQOLが著しく低下した痔瘻には ストーマ造設し症状改善を図ります。しかし最終的にストーマを閉鎖できる患者さんは少ないです。

直腸切断は術後 10%~20%で術創が閉鎖せず逆にQOLが低下することもあります。痔瘻に対するバイオ製剤は腸管病変の程度に応じて投与しますが複雑痔瘻は抗TNFα抗体(レミケード ヒュミラ)が適当でしょう。

腸管病変が落ち着いているのにCRPが高い場合は肛門病変のことがあります。

術後の再建はKono-S式吻合が狭窄は少なく 屈曲もできにくいので、狭窄した際にはバルーン拡張しやすい利点があります。術後6か月目に経過観察の大腸カメラを行います。