2022/8/25 ジセレカWeb講演会

ジセレカの特徴を踏まえた潰瘍性大腸炎治療のrepositioning

銀座セントラルクリニック 院長 鈴木 康夫 先生がご司会をされ 北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター 小林 拓 先生が上記の演題で講演してくれました。

 

先行して日本で保険適応となったJAK阻害剤 ゼルヤンツの特徴は 経口薬である 抗TNFα抗体無効例への有効性(過去の抗TNFα抗体投与の有無にかかわらず有効性が高い) 即効性(投与後3日目から症状の改善を認める)です。但し日本人においては帯状疱疹の発生率が高い点と 欧米人において抗TNFα抗体を投与したときと比較して心血管系の副作用や発がんのリスクが懸念される点です。

ジセレカの治験における成績では ステロイド 抗TNFα抗体、2剤目としてのエンタイビオは高齢者に投与すると効果が落ちるかもしれないと報告されていますがジセレカは60歳以上の患者さんに投与しても効果が減じることはなく副作用も増加しません。投与後10週まで効果がない場合でももう4週投与すると60%の患者さんが改善してきます。そのため投与中止の見極めは16週ぐらいがよいかもしれません。10週で改善した患者さんに投薬中止すると50%程度が早期に再燃します。再投与すると初回投与と同様に治療に反応します。そのためジセレカを中止するには粘膜治癒 組織学的治癒を確認してからのほうが良いと思われます。投与開始後1年間症状が改善していた患者さんはその後2年間効果が長持ちします。長期試験における副作用では 重篤な副作用:9.0PYE(1年間で100人中9.0人の割合ということ), 中止になった副作用:13.2PYE、帯状疱疹:1.9PYE です。静注や皮下注の導入は患者さんにとって心理的ハードルが高いので ジセレカはステロイド依存例の次の治療に最も適しています。ステロイド減量中に再燃したときに免疫調節剤のかわりに使用してもよいでしょう。ジセレカは免疫調節剤と併用しても副作用が増加しないので 他剤治療無効の患者さんに免疫調節剤と併用でき 高齢者にとっても有効性 安全性が高い薬剤です。1日1回の投与なので多忙な若年者の好適症例です。