2023/1/12 IBD 匠Web セミナー

内視鏡技術の変遷 -過去・現在・未来-

 

IBD治療のモニタリングの重要性を北里大学 北里研究所病院の日比先生がレクチャーし、内視鏡技術の変遷とその活用をテーマに 小腸内視鏡について自治医科の山本 博徳先生が、大腸内視鏡について慶応義塾大学の緒方 晴彦先生が講演してくれました。

 

腫瘍を診る内視鏡には原則として病歴や理学所見は必要ありませんが 炎症を診る内視鏡には病歴 理学所見が大切です。炎症内視鏡は診断 治療(クローン病の狭窄に対する拡張術)以外に 癌の早期発見のためのサーベイランスや治療介入 変更のためのモニタリングに適応されます。

現在IBDの臨床において新薬が次々と登場しており 適切な治療選択が必要ですがエビデンスとコンセンサスが少ないのが現状です。各薬剤の位置づけについては 作用機序からの位置づけと 治験や実臨床のおける経験から有効因子 1次無効例より無効因子を抽出する、製薬会社と共同して副作用データの蓄積とその解析が大切です。さらに内視鏡所見 生検所見から有効 無効の因子を探し出すことが今後期待されます。

クローン病の小腸病変は炎症 潰瘍があっても症状にでない 採血 バイオマーカーなどに反映されにくい 狭窄しやすく 狭窄形成後に初めて腸閉塞などの症状がでてきます。狭窄 瘻孔などの合併症が出る前に治療を開始することが重要です。粘膜治癒を目標に治療をすすめますが ダブルバルーン小腸内視鏡や小腸カプセル内視鏡で粘膜の状況を確認することが必須で、粘膜治癒を達成していなければ薬物治療の最適化が必要です。

潰瘍性大腸炎においても内視鏡における治療目標は粘膜治癒ですがMES0, UCEIS≦1を達成すると再燃リスクが減じます

潰瘍性大腸炎患者に大腸カプセル検査を行うときの最も困る点は直腸を観察できない時があるという点ですが 前処置にヒマシ油30ml飲ませると直腸にほぼ到達できます。

MES0でも早期に再燃する場合がありますが そのような場合 生検するとGEBOSスコアが高いことが多いです。再燃をふせぐためには組織学的治癒まで達成するほうがよいというデータもあります。この組織学的治癒の評価を超拡大内視鏡がおこなえるかもしれません。超拡大内視鏡の所見はGEBOSスコアと相関することが証明されています。またAI を応用して 超拡大+NBI所見をAIで判定し炎症がactiveかinactiveか判定するシステムも構築されようとしています:Endo-Brain

潰瘍性大腸炎の炎症が原因で発生する大腸癌(UCAN)に関して 病理学的にhigh grade dysplasia(HGD)と診断される病変の特徴は 直腸・S状結腸に80%が存在し superficial elevated, flat, depressed で85%を占め 発赤調粘膜を呈します 病変範囲の同定には色素散布が有用です。

これまで内視鏡のスコアリングには 最も重症な部位の一部分の点での所見で評価してきました。しかし実臨床においては病変範囲 長さ 広さなど面での所見も考慮されます。AIによる自動画像判定:UCEGSを用いると病変範囲を含めた面での評価も加えることができ、治療効果の客観的な評価に有用です。今後治験における治療効果判定に採用されることが期待されます。