2023/1/18 ゼルヤンツ潰瘍性大腸炎m3Web講演会 その2

Bio/JAK製剤使用患者における帯状疱疹のマネジメント

上記の演題で 旭川医科大学の藤谷 幹宏先生がご司会され、中京病院皮膚科部長の小寺雅也先生が講演されました。

 

日本人の潰瘍性大腸炎に対しゼルヤンツを投与すると 潰瘍性大腸炎の活動性の高い短期では10mg投与のほうが5mg投与より帯状疱疹(HZ)の発症率は高いが長期では変わらなくなります。発症時期に差はなく累積効果はありません。

日本人のリウマチ患者さんではHZ発症率:4.5%人年 重篤なHZ:10% 50歳以上で発症リスクが上昇し疾患活動性の高い時に発症率が高いです。ほとんどが1回のみの発症ですが 少数ですが複数回発症する患者さんがいます。発症したら70%の患者さんが2週間程度休薬して回復後治療再開しています。30%の患者さんは治療継続していました。

日本人のHZは幼少期にまず第一のピークがあり 50歳以上で急激に増加し70歳代で発症の第二のピークがあります。20歳から50歳では低率ですが 最近少子化などで水痘ウィルスへの暴露が減りこの年齢層でも少し発症が増加傾向です。発症には細胞性免疫が重要で 皮内反応が高度な方は痛みや皮疹が少ないです。HZが軽症の場合は皮疹が発赤のみで診断が困難なことがありますが そのような時はデルマクイックという判定キットを利用するとよいでしょう。

抗ウィルス薬の治療は皮疹出現後72時間以内に開始します。これまでのHZ抗ウィルス薬は腎機能障害のある患者さんには減量して投与します。アメナリーフは1日1回の服用で腎機能障害のある患者さんに減量の必要なく 腎透析患者さんにも投与できます。但し髄液移行が少ないので 頭痛の激しい方 髄膜炎を併発している方には バラシクロビルや点滴の抗ウィルス薬で加療します。免疫能低下 重症 高齢 痛みが激しいなどの患者さんには点滴の抗ウィルス薬で治療します。

帯状疱疹後疼痛(PNH)は皮膚の痛みが治癒した後の神経の変性による痛みです。50歳以上でHZを発症するとその20%がPNHに移行すると報告されています。HZの治療は痛みをすぐにとってあげることが重要で激しい痛みの場合は最初からプレガバリンなどを使用するほうがよいでしょう。潰瘍性大腸炎、クローン病 関節リウマチ、全身性エリテマトーデスの患者さんは一般の方よりHZの発症リスクが高いです。

これまで使用されてきた水痘生ワクチンはHZの発症を50%低下させますが接種後5年で効果は半減します。最近発売されたリコンビナントワクチンのシングリックスは50歳代で有効率97%、70歳代で90%です。まれにHZを発症する場合もありますがPNHに移行しません。10年たっても効果は有効です。HZ発症した方にも接種するとその後の発症を高率に予防できます。副反応は局所反応(痛み 頭痛):1%1日で改善 全身反応(発熱 全身倦怠感など):5% 1日で改善します。免疫抑制状態の患者さんにもシングリックスの予防接種は有効です