2023/1/26 カログラ錠Web講演会

非難治例における潰瘍性大腸炎治療薬の基本と実践

-経口α4インテグリン阻害剤の登場を踏まえて-

 

上記の演題で 東京医科歯科大学の渡辺 守先生が司会をされ 広島大学病院 内視鏡診療科・IBDセンター 客員教授の上野 義隆先生がご講演されました。

 

潰瘍性大腸炎患者さんの約70%は5-ASA製剤とステロイドで治療でき、分子標的薬(バイオ製剤 JAK阻害薬など)を投与しないで治療で可能な非難治例です。

5-ASAの作用機序は 概してマクロファージ、好中球 上皮細胞などの自然免疫を抑える事です。

ステロイドの治療は長期予後が不良で投与約2年後にはその半数が難治化します。分子標的薬は基本的にステロイド投与後に使用します その時潰瘍性大腸炎の病態はそれぞれの患者さんによって異なる、いわゆるヘテロな状態になっていますが このステロイド投与がヘテロ状態を形成させているのかもしれません。そのため5-ASA製剤が効果不十分の場合ステロイドを投与せずにすぐにバイオ製剤を投与するという治療法も良いと考えられますが その問題点としては 高薬価 長期の安全性 経口薬でないことなどが挙げられます。

軽度の炎症は好中球が主体ですが 重症になるにつれTNF-α、IL-23などの炎症に関わるサイトカインが増加し病態がヘテロ、複雑になります。リンパ球の腸管へのホーミングを防いでヘテロになる前に治療することが潰瘍性大腸炎の病態改善に大切です。この作用機序を持ったお薬がカログラです。

5-ASA高用量投与で効果不十分の時がカログラの適応です。その有効性はステロイドには及びませんが5-ASAスイッチより効果があります。潰瘍性大腸炎の活動性が中等症までで 5-ASA製剤の効果が今一つ、もう一息の患者さんによい適応です。高齢者 担癌患者 エンタイビオの2次無効にもよいでしょう。中等症でも症状が強い重症よりの患者さんはステロイドのほうがよいでしょう。1日24錠服用するのが難点ですが錠剤の大きさはリアルダとアサコールの中間ぐらいで カロナールと同じ程度です。副作用の少ないお薬ですが 同じ作用機序のお薬:タイサブリ(ナタリズマブ)がいち早く使用されている欧米において致死的な神経疾患:PML(進行性多巣性白質脳症)の発症が報告されています。その症状は けいれん しゃべりにくい 手足のまひ 意識の消失または低下 物忘れなどです。一般にはPMLはエイズ患者さんに多い病気です。タイサブリを投与された患者さんのPML発症のリスクは①長期間の投与:2年以上②免疫調整剤の併用③JCウィルス抗体陽性 種々の研究ではJCウィルス抗体陽性者は55%~70%と報告されています。欧米では ナタリズマブ投与患者中0.43% 市販後調査ではナタリズマブ投与患者中0.37%とPML発症率が報告されています。カログラはPML発症の潜在リスクを持ったお薬なので6か月以下とされている投与期間を遵守することが最も大切です。カログラ投与で再燃した時は似たような作用機序の白血球除去療法で治療するとよいかもしれません。