2023/10/20 Ulcerative Colitis 全国Web セミナー
病態と薬効から考える潰瘍性大腸炎治療選択
防衛医科大学校 内科学講座 教授 穂苅 量太 先生が司会をされ 弘前大学 消化器血液内科学講座 櫻庭 裕丈 先生が上記の演題で講演してくれました
潰瘍性大腸炎は必ず粘膜から障害がスタートし、上皮細胞 粘膜間質細胞に免疫異常が起こっています。腸内細菌叢は寛解期において潰瘍性大腸炎は健常人と変わりなくなりますがクローン病はdysbiosisが継続しています。
潰瘍性大腸炎の方がクローン病より複雑な免疫応答が見られます。
潰瘍性大腸炎において多核白血球以外はα4β7陽性細胞が炎症を主として起こしている細胞です。
5-ASA製剤は粘膜に到達して上皮細胞 粘膜間質細胞に直接作用します。
好酸球とα4β7陽性細胞が主たる病態を形成しこれはTh2細胞が誘導します。
炎症の場においてB細胞は形質細胞へと分化しますが形質細胞は粘膜治癒を阻害する働きがあります。
TNFαの受容体は様々な細胞に発現されています。
抗TNFα抗体(レミケード、ヒュミラ、シンポニー)の投与開始直後はよく効いていたのに2次無効になった場合はチオプリン(イムラン アザニン)の併用が有効です。
IL12を抑制すると感染や抗腫瘍免疫も抑制されます。IL12は再燃の時の重要なサイトカインです。IL23はTh17細胞 特にmemory T 細胞の増殖を促します またpositive feedbackによりTh1/Th17細胞を増加させますのでIL23を抑制しても感染や腫瘍免疫が心配になります。
好中球は炎症時にはIL23を多く放出するのでエンタイビオ無効の時には白血球除去療法を併用するとよいでしょう。JAK阻害薬は多くのサイトカインを抑制するので長期間使用すべきではありません。
カログラは中等症で軽症よりの患者さんに有効です。病理学的には形質細胞浸潤 好中球浸潤 好酸球浸潤が消退すると潰瘍性大腸炎の経過はよくなります。好酸球浸潤が顕著なほどステロイドの反応性はよいです。
潰瘍性大腸炎の治療目標は再燃しないこと 発がんしないことです。再燃抑制には 内視鏡寛解:MES0、バイオマーカー寛解:便中カルプロテクチン;正常値、組織学的寛解:好酸球 形質細胞の消退を達成することが必要です。発癌抑制には好中球による組織障害を制御することが必要です。