2023/10/23 UC治療フォーラム

より良い潰瘍性大腸炎治療を目指して

 

佐賀大学 消化器内科 教授 江崎 幹宏 先生が司会をされ 福岡大学 消化器内科 主任教授 平井 郁仁 先生が上記の演題で講演されました。

 

潰瘍性大腸炎は一度寛解になっても1年で50%、5年で75%、8年で85%が再燃します。潰瘍性大腸炎治療の基本は5-ASA製剤ですが 高用量で治療を開始すると 次の治療が必要になるのはそのうちの25%です、通常量で治療を開始すると38%と上昇します。5-ASA製剤は一部の腸内細菌(ファーミキューティスなど)の代謝により不活化されます。一部の腸内細菌の増加は5-ASA治療の効果低減につながるかもしれません。また最近の研究では口腔内の細菌組成をみることでクローン病に対する抗TNFα抗体の治療結果の予測ができるかもしれないとされています。

治療開始時に アルブミン低値(≦3.5) 貧血 内視鏡で高度の炎症などが予後不良因子で このような患者さんに対しては 最初の治療で効果がなければ早めに次の治療にすすむことが肝要です。

オンボー(ミリキズマブ)はIL23を特異的にブロックするバイオ製剤です。治験の成績では短期効果はバイオナイーブ群のほうがバイオ不応群を上回っていますが1年経つと同等になります。治療で効果が出るとその後再燃しにくいのと副作用が少ないのが特徴です。副作用は皮下注射部位の疼痛が多く 皮下注製剤にはクエン酸が含まれているからと思われます。導入時4週毎に3回点滴しますが3回点滴後の効果がなくてもさらに3回点滴すると 追加投与した患者さんの約50%に効果がでてきます。また維持治療は4週毎に皮下注射しますが維持治療中に効果減弱した場合 再寛解導入でまた3回静注できます。その寛解率:約40%、有効率:約60%です。

潰瘍性大腸炎の治験でオンボーは初めて便意切迫感の改善を治療の指標として用いました。便意切迫感があるとその患者さんのQOLが低下しますがこれが改善されると予後もよくなります。便失禁があるような状態であると入院率、ステロイドの導入率が増加します。