2023/11/02 JDDW2023ランチョンセミナー

多様化する治療選択肢と患者ニーズを考慮したUC治療戦略

上記の演題で  東京慈恵会医科大学 消化器・肝臓内科 主任 教授 猿田 雅之 先生が潰瘍性大腸炎におけるミリキズマブ(オンボ-)の有用性について講演されました。

 

潰瘍性大腸炎は患者さんの80%が慢性に経過します(慢性持続型:30%、再燃寛解型:50%) 内視鏡検査において 完全粘膜治癒:MES0に加え 組織学的治癒:好中球と形質細胞浸潤の減少が達成されるとさらに再燃しにくくなります。夜間排便 便意切迫感がなくなり 便とガスの区別がつくようになれば患者さんの病状は改善しています。

腹痛 下痢などの臨床症状がないときに大腸カメラをせずに粘膜治癒を判定するのにバイオマーカーが役立ちますが 便中カルプロテクチンは便検査のため検体を持って来れないときがあります。それに対し新規のバイオマーカーである尿中PEG-MUMは基本的に採取が簡便です。もうすぐ実臨床で使用可能になりそうです。

ステロイド抵抗性の重症 劇症の潰瘍性大腸炎患者さんにはプログラフかレミケードが良い適応ですが 大腸に広い潰瘍があり便中にレミケードが漏れるとその効果が減弱するというデータがあるので、海外では初回10mg/kgで投与し1週後に5mg/kgで2回目投与します。

プログラフは血中濃度を至適濃度に合わせるので アルブミンが1台の患者さんにはプログラフ、2台の患者さんにはレミケードがよいと思われます。

JAK阻害剤は有効性が高いですが帯状疱疹などの副作用に注意が必要です。エンタイビオは短期の有効性は低いですが長期に投与できると粘膜治癒率が向上します。

ステラーラは炎症の上流であるIL12とIL23を抑える薬剤で バイオ無効例にもバイオナイーブとほぼ同等の治療成績です。寛解状態でも組織にIL12, IL23濃度が高値の患者さんのほうが再燃しやすいことが報告されています。またステラーラの有効性にかかわるのは組織内IL-23濃度であることも報告されています。オンボ-(ミリキズマブ)はIL23を特異的に抑制するバイオ製剤です。治験において日本人での短期の有効率は70%です。最も良い適応の患者さんは慢性難治で経過しているが入院するほどひどくない方です。