2023/11/3 JDDW2023サテライトシンポジウム

病理が導く潰瘍性大腸炎の治療戦略

~Geboesスコアを活かす~

浜松医科大学 内科学第一講座 教授 杉本 健 先生が講演してくれました。

 

潰瘍性大腸炎はヘテロなサイトカインプロフィールを有しますがそのプロフィールを大別するとTh1系細胞,Th2系細胞,Th17系細胞に分類できます。

Th細胞がサイトカインを放出します。Th1系細胞が病態の主体の場合、マクロファージ 樹状細胞が主たる細胞で IL12 に誘導されるTNFαが主たるサイトカインです 関節リウマチや壊疽性膿皮症を合併することがあります。重症例はTh1系細胞が主のこと多いようです。マクロファージはIL12を産生してTh0細胞をTh1細胞に誘導しTNFαを産生します。プログラフはIL2をブロックしてTh1細胞の増殖を防ぎます。 IFNγも産生されますがこれを制御しても腸炎は改善されませんでした。

Th17系細胞が病態の主体の場合 好中球が主な細胞で IL6に誘導されるIL-23が主のサイトカインです、乾癬を合併することがあります。IL17, IL22も産生されます。IL17は好中球を誘導する働きもありますが IL17, IL22を制御しても腸炎は改善されませんでした。

Th2系細胞が主体の場合は好酸球が主たる細胞でIL-5,GM-CSFが主のサイトカインです。喘息 アレルギー アトピー性皮膚炎を合併することがあります。

最近保険で認可されたPEG-MUMは尿により測定され、Th17系細胞のマーカーです。内視鏡の活動性 炎症の活動性を反映し 再燃予測にも有用です。

内視鏡的にMES0でも便中カルプロテクチン>300であると将来再燃する確立が高くなります。

サイトカインのプロフィールは病気の時期や治療により修飾されます。ステロイド依存の患者さんはTh2系細胞が主体で、ステロイド抵抗例はTh1系細胞 Th17系細胞が主体と思われます。

炎症がくすぶっているような慢性持続型で、病理で好酸球が増加している場合はステロイドを短期間投与すると改善することがあります。

病理所見は病態の理解 内視鏡検査で炎症の程度 腸管外合併症、ステロイドの反応性などを総合的に判断しサイトカインのプロフィールを予測してお薬を決定するとよいでしょう。

潰瘍性大腸炎の病理評価でGeboesスコアがよく用いられます。Grade2Aは好酸球、Th2系細胞の関与を示します。Grade2B, Grade3は好中球 Th17系細胞の関与を示します。好中球の腺管への浸潤は病態で好中球有意を考えます。

重症例はTh1系細胞が主のこと多いようですのでレミケード プログラフが選択されます。白血球除去療法を併用するとより効果的です。

リンヴォックはGM-CSFを抑制しアトピー性皮膚炎にも保険適応があるのでTh2系細胞が主体の時にも有効な治療法になります。