2023/11/4 JDDW2023ブレックファーストセミナー
ガットフレイル:その概念、病態、対策
京都府立医科大学大学院医学研究科 生体免疫栄養学講座 教授 内藤 裕二先生 講演
人間の腸の中には100兆個の腸内細菌が常在しています。腸内の常在菌は酪酸 短鎖脂肪酸を産生することにより制御性T細胞を誘導し炎症を抑制しています。
腸内細菌叢の変化 腸内環境の変化により 慢性炎症が持続する結果 生活習慣病の発症や老化が進むことがだんだん明らかになってきました。最近の研究で日本人の腸内細菌は5つのパターンに分類されるそうです。ガットフレイルは胃腸の働きの虚弱化という概念です。中でも便秘は各種の疾患のリスクを挙げます。例えば 生存率は低下し(10年で8%) パーキンソン病 慢性腎疾患 認知症のリスクを上昇させます。また便秘症は労働生産性を低下させます、3歳未満の便秘はその後の自閉症発症のリスクになります。薬剤で便秘をよくしても病気自体は残念ながらよくなりません。患者さんひとりひとりの病状をよく把握することが大切です。
ガットフレイルの対策 予防としては ミヤリサンを代表とする整腸剤の摂取 食物繊維 高発酵食品の摂取 適度な運動が重要です。食物繊維不足は腸管粘液の減少をもたらします。高発酵食品は腸管粘液不足を回復させます。食物繊維の摂取は小腸炎症惹起細胞の減少をおこします。運動することにより腸内細菌叢の働きを介して 脂肪肝 大腸癌、サルコペニア等の予防に役立ちます。日本ではまだ保険適応はありませんが糞便移植もガットフレイルの改善に貢献できそうです。最近の研究では運動による健康増進の成果は腸内細菌を介しているそうです。運動することにより腸内細菌が変容しその結果 胆汁酸代謝が変化することがそのメカニズムのようです。また食事 運動 睡眠 肥満予防 禁煙 禁酒などでクローン病 潰瘍性大腸炎の発症リスクが50%ぐらい下げることができると疫学調査でわかってきました。日々をどのようにすごすかが本当に大切ですね!